日本国内だけで勝負するのか?「フランチャイズ」でリスク低減して海外進出を目指す方法

日本は、2006年を期に人口は減少し続けており、2050年には1億人を割り込むと予測されています。縮小する日本国内。まだ日本国内だけで商売を続けるのか?しかし、いざ海外といっても大きなリスクを伴うことは事実。
そこで登場する方法が「フランチャイズ」です。フランチャイズ方式であれば、たとえ経営資源に乏しい中小企業でも海外展開は十分に可能となります。

海外進出の方法

日本企業が海外進出する方法として以下のような3パターンが考えられます。

  1. 現地に直営店を出店する
  2. 現地企業と直接フランチャイズ契約を結ぶ
  3. 現地企業とマスターフランチャイズ契約を結ぶ

1.海外に「直営」を出店する方法

海外に直営店を出店する際、現地法人を設立しないのであれば、日本法人の出先機関や海外支店のような位置づけとなります。
この場合、直営店は日本本社の一部なので、現地において意思決定機関(株主総会、取締役会など)を置く必要はありません。その点においては、簡便な方法であると言えます。しかし、現地国の法律・規制などによっては設置時やその後の運営において、現地法人を設立するよりも手続きが煩雑となるケースもあります。
現地直営店のマネジメントは、日本本社が直接行うことになるため、店舗の品質維持はしやすくなります。しかし、現地国におけるコネクションがなけば、現地の店舗開発や関連企業の開拓に苦労することになるでしょう。実際、海外展開は果たしたものの良い物件が開拓できず、思うような収益があげられていない事例も聞いています。
さらに、現地でのトラブルや裁判があった場合には、日本本社が直接対応しなければならず、また、法的保護が受けられない可能性もあるため、何かあった場合のリスクは高くなる可能性はあります。
基本的には、日本企業のスタッフが現地へ出向等をすることになると思いますが、現地国の法規制や文化、商習慣等に精通している必要がありますし、直営展開する場合でも、現地で専門的な対応をしてくれるパートナーはいた方が良いでしょう。

2.現地企業と直接フランチャイズ契約を結ぶ方法

日本企業と海外企業との間で直接、フランチャイズ契約を締結し、海外企業に店舗を出店させる方法で「ダイレクトフランチャイズ」と呼ばれています。
この場合、海外のFC加盟店のスーパーバイジング(SV)は日本法人(フランチャイズ本部)が直接行うことになります。アメリカとメキシコなど、隣接する国の企業とダイレクトフランチャイズ契約を結ぶのであれば、商品のや原材料などの配送や店舗指導をしにいくことは、比較的やりすいですが、島国である日本の場合は、相当のコストがかかります。
海外店舗が直営であれば、品質・ブランドのコントロールは比較的しやすいですが、この場合は、他事業者(しかも海外)となるため、十分な目が届かない状態になってしまうと、本部の期待するような結果は得られなくなる可能性は高まります。この形をとるのであれば、相当な信頼関係が持てる相手でないと、成功は難しいでしょう。

3.現地企業とマスターフランチャイズ契約を結ぶ方法

海外現地にフランチャイズ事業を統括する本部(現地フランチャイズ本部)をつくり、日本企業(総本部)は、現地フランチャイズ本部とマスターフランチャイズ契約を締結する方法です。現地フランチャイズ本部の立て方には、以下の3パターンがあります。

  1. 現地パートナー企業にマスターフランチャイズ権を付与する
  2. 現地パートナー企業と立ち上げた合弁会社にマスターフランチャイズ権を付与する
  3. 日本のフランチャイザーが立ち上げた100%現地子会社にマスターフランチャイズ権を付与する

マスターフランチャイズ権とは、日本企業(総本部)が、現地フランチャイズ本部に対して、現地にて加盟希望者を募集してフランチャイズ展開をする権利(サブフランチャイズ)を付与することです。また、マスターフランチャイズ権には現地フランチャイズ本部が、自ら直営店を出店する権利も付与するのが一般的です。
現地フランチャイズ本部が、直営店舗の出店だけを行い、サブフランチャイズを行わない場合もあります。現地フランチャイズ本部に、フランチャイズ募集までを任せるとなると、総本部は、店舗の指導だけでなく、本部機能についても指導していく必要があります。過去に、フランチャイズ研究会で、海外展開に関する取材をしたことがあります。このとき、インタビュー対象となった企業は、全て、日本国内でフランチャイズ展開しているチェーンでした。しかし、海外では、フランチャイズ加盟者は募集せず、現地フランチャイズ本部の直営店のみの展開としているケースがほとんどでした。海外で加盟店募集までを行いフランチャイズ展開することの難しさを表していると思われます。

3-a.現地パートナー企業とマスターフランチャイズ契約

日本企業(総本部)が、現地のパートナー企業とマスターフランチャイズ契約を締結する方法です。
この方法は、日本企業(総本部)は出資や投資が発生しませんし、さらに、マスターフランチャイズの契約金を受け取ることができます。金銭的な負担やリスクは少ないというメリットがあります。また、現地のパートナー企業は、その国の文化や経済環境を熟知しているため(そのようなパートナー企業を選定する必要がある)、現地に合った店舗展開を期待できます。
一方で、現地での品質管理は、パートナー企業任せとなるため、総本部が、信頼できるパートナー企業選びをできるかどうかが成功可否の大きなポイントとなります。例えば、以下ようなことがパートナー企業を見極めるポイントとなります。

  • 契約を遵守しようとする姿勢があるか
  • 店舗運営能力は高いか
  • 事業展開をするための経営資源(人・物・金・ノウハウ等)は十分にあるか
  • 総本部がパートナー企業をコントロールできるか

3-b.現地パートナー企業と合弁会社を設立しマスターフランチャイズ契約

日本企業(総本部)と、現地のパートナー企業と合弁会社を設立し、そこを現地フランチャイズ本部とする方法です(総本部と合弁会社がマスターフランチャイズ契約を締結する)。
出資方法として、日本企業が現地のパートナー企業に出資する方法や、パートナー企業とともに合弁会社に出資する方法などがあります。合弁にすることで、日本企業と現地のパートナー企業、両社の強みを発揮することが可能となります。ただし、この方法の場合、進出先の国によっては、外国企業はマジョリティを取ることができないなど、出資(投資)に関する規制等も存在するため、進出先国の法制等について事前のリサーチをしっかりと行っておく必要があります。
合弁会社に場合、その出資割合に応じて経営の意思決定に関する主導権が変わるため、日本企業がマジョリティを取ることで意思決定に対する主導権を持つのか?あえてマイノリティにしてパートナー企業の積極的な活動に期待するのか?その方向性、双方の役割分担を戦略的に決めておく必要があります。

3-c.現地に100%子会社を設立しマスターフランチャイズ契約

現地に日本企業(総本部)の100%子会社を設立し、その子会社(現地フランチャイズ本部)とマスターフランチャイズ契約を締結する方法です。
この方法は投資額が大きくなるので金銭的な負担やリスクは大きくなるものの、直営展開と同じように、日本企業の人材を投入することなどで、現地店舗の品質維持はしやすくなります。また、現地国の法規制や文化、商習慣等の情報をいかに得られるかということが重要であるため、現地子会社の経営陣や重要ポストに現地スタッフを登用する方法も有効です。
なお、現地ですでに店舗展開するような法人を買収して100%子会社化する方法もあります。実際、このような方法で、既存店舗をFCブランドの店舗へ転換していき、短期間に一気に数百店舗を増やしているケースも存在しています。


以上、海外進出の方法の概略を解説しました。

過去に、フランチャイズ研究会(https://fcken.com/)にて取材した結果では、調査対象チェーンの海外展開方法は、ほとんどのケースが、現地パートナー企業との「マスターフランチャイズ契約」による展開となっていました。
これは、海外展開をするには、現地の有力なパートナー企業の存在が欠かせないことを示しています。海外展開が成功するか失敗するか、その大きな鍵となるのが、現地パートナーの選定となります。現地の情報に明るく、有効な物件情報や流通チャネルなどを持っており、かつ、日本企業(総本部)のビジョンに賛同してもらえるパートナーかどうか、その見極めに全てがかかっているといっても過言ではないでしょう。

(参考文献:『フランチャイズ方式による海外展開ガイド(すぐ使える3つの契約書ひな形付)』フランチャイズ研究会 著)

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