以前のコラムで、プロトタイプモデルの確立について解説しましたが、今回は、これをフランチャイズ本部の立ち上げを具体的に進めるための「コンセプトワーク(設計)」について解説します。
フランチャイズ本部を立ち上げるためのコンセプトワークとは?
コンセプトワークとは、あるアイデアを具体的な形にしていくことであり、コンセプト(概念)を言葉で明確に表現する作業のことです。設計図がなければ家が建てられないのと同様に、フランチャイズ本部構築にあたってもコンセプトワーク(=設計図作成)は必要不可欠なプロセスです。
本部構築のためのコンセプトワークは、「業態=プロトタイプ店」と「フランチャイズ本部」の2つについて行います。
コンセプトワーク【業態編】
フランチャイズ展開をするためには、直営1号店の成功は絶対条件です。そして、この1号店がなぜ成功したのか?その検証作業が最も重要です。成功要因は何かを具体的に抽出し、それを横展開できるようにすることで、2店舗目、3店舗目、そしてFC加盟店の展開へとつながっていきます。
コンセプトワークでは、上記のようなコンセプトシートを用いて、成功要因を項目ごとにまとめます。各項目は関連するので、行ったり来たりしながら検討を進めることになりますが、まずは、「事業理念・将来ビジョン」、「一言でいうとどんな事業か(=事業コンセプト)」、「外部環境・競合」をまとめるところからスタートします。
これらをインプットとして、【誰に】【何を】【どうやって】と具体的に落とし込んでいきます。
コンセプトの軸 | 検討のポイント |
誰に(ターゲット顧客/顧客のニーズ) | どのようなターゲットに製品やサービスを提供するのかを明確にします。一定の収益を確保するには、市場性のある顧客ターゲットを定める必要があります。できるだけ詳細に明確に打ち出すことがポイントです。顧客層を明確に打ち出すことで、フランチャイズビジネスの仕掛けも明確なものになります。 |
何を(商品・サービス/価格) | ターゲットとなる顧客のニーズに応える商品やサービスのことです。顧客が抱えている何らかの悩みを解決したり、顧客をより楽しく、快適にしたりする商品やサービスが必要です。また、商品やサービスの価格(帯)も重要なポイントです。 |
どのように(施設要件・外装・内装/立地条件/販売促進方法/店舗の人員体制) | 商品・サービスを実際に提供する場合の提供方法やノウハウ(=独自の成功ノウハウ)のことです。これらには、顧客へ商品・サービスを提供する店舗の立地条件や施設要件なども含まれます。 |
そして、これらの結果から、この事業の優位性はどういうところにあるのか「ブラックボックス」、「収益性」という観点からまとめていきます。
ブラックボックスとは、一見マネができそうだけど、内部の構造が明らかでないものや原理が不明なものです。ブラックボックスがあることで、マネをしてみたけれどうまくいかないという状況が作れて真の競争力を持つことができます。
この事業の優位性があるからこそ、フランチャイズ展開が可能になるのです。
これらが、今後のフランチャイズ展開の原型となるプロトタイプとなります。
コンセプトワーク【フランチャイズ本部編】
次に、フランチャイズ本部のコンセプトワークを行います。
多くの店舗が統一した活動を行うようにするためには、多店舗展開における理念やビジョン(何のためのFC本部展開か)をしっかりと構築しておくことが必要です。フランチャイズ研究会による調査では、成功している加盟店ほど、本部の経営理念やビジョンに賛同していたという結果が出ています。
そして、業態編と同様に
- 【誰に】「加盟店開発ターゲット」、「目標オーナー数・店舗数」
- 【何を】「FCパッケージ」、「加盟条件」
- 【どうやって】「加盟店開発方法」、「本部体制」、「加盟店の収益性」、「開業時初期費用」
と具体的に落とし込んでいきます。
ここで整理したコンセプトシートを元に、具体的なFC本部の構築に取り掛かっていくことになります。この内容は、この後に作成していくことになる「フランチャイズ契約書」にとって非常に重要なインプット情報となります。