SVを育成しないままの店舗展開は危険 -フランチャイズ本部のSVに必要な6つの能力-

普段、私がご支援する企業様は、フランチャイズ本部としてはアーリーステージにあり、これからフランチャイズ本部を構築しようとしているか、フランチャイズ制度は導入したもののまだ不十分な状態というケースがほとんどです。アーリーステージのフランチャイズ本部で問題になりやすいのが、SVの育成まで手が回っていない状況にあるということです。そのため、急速に店舗数が増えている・増える計画がある状況にも関わらず、加盟者に対して十分な指導・支援ができない可能性があるということです。

いきなりですがクイズです。下の写真を見てください。左の写真の雑草が芝の中に生えていました。右の写真のなかにあるのですが、どこにあるのかわかりますか?

我が家の小庭に張ってある芝なのですが、病気などが発生していないか芝の状態をざっと見ていたときに「おや?」と違和感を持ちました。この芝を育てて、かれこれ5年以上になりますが、我ながら妙な能力が身についたものです。

フランチャイズビジネスにおけるSVの役割とは?

ビジネスフォーマット型フランチャイズの特徴として、多くの場合、ロイヤルティの対価として本部による継続的な経営指導が行われます。その継続的指導を行うのが「SV」ということになります。

SVは、加盟者が継続的に利益を上げていくために必要な指導・支援を行います。加盟者の単なる御用聞きではありません。チェーン全体の永続的繁栄を目的に、本部の方針やノウハウに従って適切な運営がおこなわれるよう、本部と加盟者の間に立ち、効果的な支援を行わなければなりません。SVが果たす役割は非常に重要です。

そして、SVはフランチャイズ本部の代表であり、SVの言動=本部の言動です。そのSV自身が加盟者からの信頼されなければ本部も信頼はされません。さらに、加盟者からの声を本部へ届ける役割もあります。

SVに必要な能力 ~違和感を持つことができるか?~

SVに必要な能力を一言でいえば「違和感を持つことができるか?」ということだと思っています。

違和感とは、「普通とは違うぞ?」「いつもと様子が違うぞ?」といった、なにかしっくりこない感覚のことです。例えば、加盟者を訪問したときに、「この商品だけがマニュアル通りに置かれていないぞ?」とか、「こことここの調理の順番が入れ替わっているぞ?」とか、「いつも文句を言ってくるオーナーが今日は無口だぞ?」などということに気づき、「それはなぜだろう?」と思えるかということです。あるいは、加盟者から上がってくる報告書や数字を見たときに、僅かな変化に気づけるかどうかということも含まれます。

ここで私が言う違和感とは「悪いこと」だけではありません。逆に良い状態のときにも、「なんでうまく行っているのだろう?」というプラスの疑問を持つことも重要です。

本部のマニュアルや指導内容にとどまらず、加盟者が独自の取り組みを行っていることがあります。マニュアル通りではないが実は効率的で品質も向上することができる方法を行っているとか、その加盟者が独自に取り組んでいる人材育成の方法などがあり効果を発揮しているとか。これらは、他の加盟者の参考になる取り組みであることもあり、チェーン全体で共有したり、場合によっては本部のマニュアル(標準)を改訂したりする絶好のネタであることもあります。ただし、その加盟者(店舗)だからできることであった場合には標準にはできませんし、チェーン全体のイメージを壊してしまうような取り組みであった場合は是正すべきです。この見極めは必要です。

さらに、外部環境に対しても同じような感覚を持つことは必要です。「最近、店舗前の人通りに変化が出てきたぞ?」とか、「店舗に来るまでの間にマンションの建築工事が始まっていたぞ?」とか、「近隣の競合他社がメニュー内容を変えてきているぞ?」といった、いつもと違う状況を感じられるかということも重要なことになります。

SVに必要な6つの能力

SVに必要な能力をもう少し具体的な項目に落とすと、コンサルティング能力/カウンセリング能力/コミュニケーション能力/コーディネート能力/コントロール能力/プロモーション能力といったものになります。

それぞれを確認します。

1.コンサルティング能力

フランチャイズチェーンの業務に関する専門知識は当然のこと、経営的な知識も合わせ持ち、加盟者に対して外部の立場で客観的に現状を観察して、問題点の把握と、その原因を十分に分析し、問題を解決するための対策案を示し加盟者の発展を助ける能力です。

2.カウンセリング能力

様々な問題や課題を抱える加盟者に対して心理的な援助を行う能力です。カウンセリングの領域(加盟者が解決を求める範囲)は、お金に関わる問題にとどまらず、従業員との労使問題や家庭・家族にまでおよぶ場合もあります。

3.コミュ二ケーション能力

SVの重要な役割として、本部と加盟者をつなぐパイプ役というものがあります。加盟者に対し本部からの連絡事項を伝達するだけでなく、加盟者に行った経営指導の内容や結果、加盟者からの相談内容を本部に報告することも重要な役割です。そのため、伝える能力だけなく、聞く(聴く・訊く)能力も必要になります。

4.コーディネーション能力

フランチャイズ本部の各部門との調整能力です。フランチャイズ本部には、事務管理、営業、広報、IT管理、店舗開発、加盟店開発、教育・研修、SVなど様々な部門があり、それぞれが連携しながら加盟者を支援していきます。SVは、加盟者の業績を向上させるために、本部の各部門と密接に連携し、最適な支援につながるように調整する必要があります。

5.コントロール能力

加盟者を管理する能力です。本部と加盟者は対等なパートナー関係です。そのため、本部が加盟者に対して一方的な命令はできません。しかし、加盟者が本部の指導に従わない場合や、契約違反の状況にある場合には、本部の指導に従い契約を遵守するように指導する必要があります。ただ説得するのではなく、加盟者が十分に納得し指導に従うように誘導する必要があります。

6.プロモーション能力

本部が開発した新商品/新サービス、本部が作成した販促物、新たに導入するルールなどを加盟者に取り入れてもらったり、実施してもらったりするための能力です。新商品/新サービスの内容やそのターゲット顧客のイメージ、販促物やルールの意図するところなどをしっかり把握し、自身が腹落ちしておく必要があります。

SVの計画的な育成は必須。本部の責任です。

新たな事業を始めようとする加盟者の不安は大変大きなものです。お客さんは来てくれるのか?売上は計画通りに上がるのか?上手くいかなかったらどうしよう?開業前だけでなく、開業後もその不安や問題に向かっていくことになります。そこでSVの出番です。フランチャイズ本部と加盟者の間に立ち、加盟者のもとで起きている問題の解決に一緒になって取り組み、加盟者の不安を取り除きます。SVは本部が掲げる戦略のもとで加盟者を支え、チェーン全体の反映に貢献しなければなりません。

本部(会社)としても、先に述べた6つの能力をもった「違和感を持つことができる」SVの育成に努めてほしいと思います。

SVを育成するには、SVに求められる要件(能力)を明確にしたうえで計画的に育成していくことが必要です。SVの育成を置き去りにしたままの店舗展開は非常に危険です。加盟者支援が十分にできない状況のまま店舗数だけが増えていくと、商品・サービスの品質が十分に保てず、あるときチェーンの崩壊の日を迎えるのです。
皆さんも、そのようなチェーンに覚えがあるのではないでしょうか?


では、最初のクイズの答えです。下の右図の赤く囲った部分が雑草です。わかりましたか?もっとも、これがわかったところでSV活動の役には立ちませんが。

参考書籍:フランチャイズ研究会 著「フランチャイズ本部構築ガイドブック」(同友館)

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