フランチャイズ本部を構築するには一定条件を満たしていることと、一定の手順を踏む必要があります。
本コラムでは、フランチャイズ本部を構築する手順について解説したいと思います。
フランチャイズ展開の条件
まず、フランチャイズ展開をするためには以下の3条件を満たしている必要があります。
条件1:自社のビジネスモデルが成功しているか
条件2:本部としての準備が整っているか
条件3:一定規模のあるビジネスか、将来性はどうか
フランチャイズ本部を構築する手順
フランチャイズ展開の手順としては概ね以下のような流れになります。
Ⅰ.コンセプトワーク・事業計画
Ⅱ.プロトタイプ店による検証・確立
Ⅲ.フランチャイズパッケージの構築
Ⅳ.フランチャイズ契約内容の決定
Ⅴ.加盟店開発マーケティング
Ⅰ.コンセプトワーク・事業計画
コンセプトワーク
加盟者が出店する店舗の基本となるモデルを検討します。コンセプトシートを用いて「業態=プロトタイプ店」と「フランチャイズ本部」の2つのコンセプトワークを行います。理念やビジョンの検討、外部環境の分析等も合わせて実施します。
加盟店収支シミュレーション
加盟店の初期投資額、収支、投資回収期間等について、直営店(プロトタイプ店)の実績をベースにシミュレーションします。ここで検討した収支モデルは、加盟希望者へ提示する加盟案内書へ記載します。
フランチャイズ本部事業計画
直営店とフランチャイズ店の比率、加盟店数(オーナー数)目標、出店対象エリア、本部事業の収益目標、本部組織体制・人数などについて計画を立てます。task2のシミュレーションと本部事業計画をもとに、加盟金やロイヤルティ等を検討します。
Ⅱ.プロトタイプ店による検証・確立
プロトタイプ店の検証
成功パターンの検証を行います。適正商圏・立地タイプの分析、商品・サービスの競争力アップ、各種標準化(店舗デザイン、店舗オペレーション等)、販売促進策の検討、必要なITシステムなど。他社に真似されないための「ブラックボックス」のポイントを探ります。
コンセプトシートへの反映
プロトタイプ店での検証結果をコンセプトシートへ反映します。コンセプトワークとプロトタイプ店による検証・確立を繰り返し、フランチャイズチェーンとしての差別化ポイントを明確にしていきます。
Ⅲ.フランチャイズパッケージの構築
フランチャイズマニュアル
必要なマニュアル体系を整理します。最低限「FC基本マニュアル」「管理マニュアル」「運営マニュアル」が必要です。プロジェクトチームを立ち上げ、作成とレビューを繰り返し精度の高いマニュアルを作成していきます。
研修プログラム
研修プログラムの設計では、受講者を「どのレベルまで引き上げるか」を設定し、「そのために必要な教育内容・方法・日数」を検討します。研修に使用するマニュアルのピックアップをし、具体的な研修カリキュラム表を作成します。
SVシステム
SVは、加盟者が継続的に利益を上げていくために必要な指導・支援を行います。店舗指導具だけでなく、加盟店オーナーとのコミュニケーションも重要です。具体的な指導・支援内容、頻度を設計し各種帳票類も作成します。
Ⅳ.フランチャイズ契約内容の決定
フランチャイズ契約書の作成
ビジネスモデルの検証を通して、フランチャイズ本部と加盟者の役割・権利・義理を整理します。その内容をフランチャイズ契約書に落とし込み、レビューを繰り返して精度を上げていきます。弁護士によるリーガルチェックも必要です。
法定開示書面の作成
中小小売商業振興法では、小売業、飲食業のフランチャイズ本部に対して法定開示書面の準備と交付を義務付けています。また、フランチャイズ・ガイドラインはサービス業も含めて、全てのフランチャイズ本部に情報開示を求めています。
その他関連書類の作成
加盟店の募集からフランチャイズ契約、開店までの具体的なフローを設計します。フロー設計を通じてフランチャイズ契約書以外に必要となる書類を明らかにし、その書類の作成を行います。
Ⅳ.加盟店開発マーケティング
マーケティング計画の立案
加盟店ターゲットの属性(個人・法人)や展開優先エリアの決定、加盟店開発方法の立案、加盟店開発ツールのアウトラインを検討するとともに、具体的な展開スケジュールを立てます。ウィズコロナでの効果的な開発方法を策定します。
加盟開発ツールの作成
加盟希望者へ提示する加盟案内書やWEBへの掲載するコンテンツなどの作成を行います。希望者が加盟したくなるような表現も必要ですが、虚偽・過度な表現、根拠なき数値などは、加盟者とのトラブル、法的措置の対象になるため注意が必要です。
セールステックによる加盟店開発
コロナの影響によりイベントや対面営業等これまでの手法が通用しなくなりました。MAツールなどのセールステックを活用した「会わない」加盟店開発方法、ツールの選定、マーケティング体制の構築を行います。
フランチャイズ本部構築の準備項目、アウトプット例
フランチャイズ本部構築の準備項目、アウトプット例の一覧を下記にまとめました。
準備項目概要 | アウトプット例 | |
Ⅰ.コンセプトワーク・事業計画 | ||
事業目的の明確化 | フランチャイズ展開の目的、ドメイン、ターゲットとニーズ | コンセプトマップ 収支シミュレーション 事業計画書 |
環境分析 | マーケット、直営店収益性、立地・商圏 | |
業態コンセプトの明確化 | キーコンセプト、競争優位性、店舗内外装 | |
マーケティング | 品揃え・価格、付帯サービス、宣伝・販促活動 | |
数値シミュレーション | 初期投資額、月次P/L、投資回収 | |
事業計画書作成 | 環境分析、事業計画、シミュレーション | |
Ⅱ.プロトタイプ店による検証・確立 | ||
出店 | 物件探索、候補立地判断、事業計画、体制構築 | |
検証 | 出店以降、店舗における検証 | |
Ⅲ.フランチャイズパッケージの構築 | ||
商標登録 | ※弁理士へ依頼するのが確実 | |
マニュアル類の作成 | マニュアル体系の確定、各種マニュアル作成 | マニュアル体系表 マニュアル一式 |
研修プログラムの検討 | カリキュラム検討、オープン後研修 | 研修カリキュラム |
SVシステムの検討 | 指導内容・指導用資料の検討、SV育成計画 | 指導内容 育成計画 |
インフラ整備 | 情報システム、物流システム | |
Ⅳ.フランチャイズ契約内容の決定 | ||
フランチャイズ加盟契約書の作成 | ※弁護士によるリーガルチェックも必要 | フランチャイズ加盟契約書 |
法定開示書面の作成 | 法定開示書面 | |
その他加盟関連書類の作成 | 加盟申込書等 | |
Ⅴ.加盟店開発マーケティング | ||
加盟案内ツールの開発 | 加盟案内書、HP(ITサービスの検討) | 加盟案内書 |
開業提案方法の確立 | 開業提案書、立地・商圏設定 | 開業提案書 |
事業説明会の検討 | 進行・構成の検討、ターゲットの検討 | 説明会プレゼン資料 |
開発スケジューリング | スケジュール表 |
フランチャイズ本部は小手先では作れない
フランチャイズビジネスでは、本部はフランチャイズパッケージの提供や事業開発を行ない、加盟者は資金投入と事業運営を行ないます。複数の異なる事業体が、契約に基づき、異なるビジネスモデルを運営し発展していくビジネスなのです。
フランチャイズ本部構築とは、本部のビジネスモデルと加盟者のビジネスモデルを同時に作り上げていくことです。そして、加盟店へ提供するフランチャイズパッケージを作り上げていき、これらの内容をフランチャイズ契約書に落とし込んでいく作業が必要になります。
フランチャイズ本部の構築プロジェクトは、本部となる企業の理念、ビジョン、店舗コンセプト、ビジネスモデル等に合わせ、個別具体的に進める必要があります。時々、他社のフランチャイズ契約書やネット上にアップされている契約書の雛形を、ちょっと変えただけで対応している本部が見受けられます。しかし、これまでの内容を理解いただけたけたならば、そのような(小手先で真似をしているだけ、取り繕っている)企業がまともな本部として継続していけるはずがないことは理解いただけると思います。