フランチャイズ加盟は、結婚に例えられることがよくあります。今回のコラムでは、フランチャイズ加盟を検討するときに大変重要となる「本部を評価するポイント」について解説します。
本部評価の大切さ
フランチャイズ加盟は「結婚」にも例えられる、まさに一生を左右する投資です。最後は加盟者自身が「成功の定義」を明確にして、理想像や夢を反映した主観的な世界で決定を下さなければなりません。しかし、客観的評価という事前の努力により、よりよい形で主観的な判断ができます。
①本部選びは人生の大きな投資である
FC加盟はお金のみならず時間(人生)も投資するものであり、じっくり吟味をする。
②本部とは長期の付き合いである
FC加盟は短期ではなく中長期の付き合いであり『相性』も大切である。
③成功への近道は良い本部選びである
『客観的尺度』と『主観的尺度』の二つの尺度で見極める。
本部選びの3ステップ
本部選びは次の3つのステップで進みます。
情報収集と整理
フランチャイズ本部を選ぶ際、まずは情報をしっかり収集して整理することから始めます。
広く情報を収集
新聞、書籍、各種フランチャイズ展示会、セミナーなど、情報は様々なところから集められますが、WEBからの情報収集は、今や欠かせないものとなっています。
フランチャイズ本部比較サイト(※“FC比較”で検索)が代表的なものです。様々な本部の情報が集められており、まとめて資料請求を行うこともできます。サイトを運営する会社では、本部と加盟希望者のマッチングイベントも開催しており、WEBとリアルの両方からフランチャイズビジネスをサポートしています。
さらに、以下のサイトは必ずチェックしていただきたいと思います。
「JFAフランチャイズガイド」
経済産業省からの依頼に基づいて(一社)日本フランチャイズチェーン協会が運営しているサイトで、フランチャイズビジネスに関する情報が掲載されています。一部のフランチャイズ本部の情報開示書面も見られるようになっており、必見のサイトです。
本部から情報を収集
広く集めたあとは、これはと思った本部の情報を集めていきます。
本部企業のホームページ、フランチャイズ事業説明会、フランチャイズ加盟案内書、本部への個別訪問、情報開示書面などがそれにあたります。
※フランチャイズ本部が、どのような情報をどの様にして発信しているか(本部の立場としては発信すべきか)という点については、改めて別のコラムでまとめたいと思います。
収集した情報を整理
定量的情報と定性的情報
集めた情報項目は「定量的項目」と「定性的項目」の2つに分類することができます。
【定量的項目の注意点】
- 収集する数値データの意味あるいは定義をよく理解する。
- 情報収集した数値データから客観的な判断をする(現状と将来予測)。
- 企業の成長段階や業種固有の特徴をできるだけ加味して判断する。
【定性的項目の注意点】
- 本部ヒアリング、加盟店ヒアリング・視察等の情報収集方法が中心になるため、主観的判断になる恐れがある。
- 客観性を持たせるためには、数社比較や競合他店舗視察を行う。
- 市場成長性や本部の成長段階、業種固有の特徴をできるだけ加味して判断する。
評価方法
評価方法には客観的評価と主観的評価があり、両面から総合的に考える必要があります。まずは、加盟対象本部の全体的な客観的評価をしっかり行い、自分の主観との整合性を慎重に見極めます。
- 複数の加盟対象本部の客観的評価をしっかり行う(6つ本部評価ポイントの活用)。
- 自分の主観(理想や成功の定義、人生観など)を再確認する。
- 「自分の棚卸」も忘れない(経営者としての資質、FCビジネスへの正しい理解)。
客観的評価 | 主観的評価? | |
定量的項目 | モデル損益、ロイヤルティ、複数店舗経営率 | 具体的目標(◯年後の売上◯円、利益率◯%、店舗数◯店舗) |
定性的項目 | 本部の経営理念、ビジョン、品格、経営者の資質 | 自身の価値観や目指す理想像、将来の夢、本部(経営者)との相性 |
6つの視点で評価
集めた情報を総合的に評価します。次に上げる6つの視点から評価することで、主観的評価と客観的評価を行うことができます。
①本部経営姿勢
本部がどのような経営者(経営陣)のもとで、どのような経営理念を掲げ、フランチャイズ事業をいかに展開しようとしているのか。その結果、本部として社会および自分に対し現時点でどのような印象を与えているのかを、「フランチャイズチェーン理念」「経営者の資質(経歴、専門知識、人間性)」「将来ビジョン」「会社の品格、印象」の4つの評価項目で確認します。
②情報公開度
加盟希望者が不十分な理解や誤解に基づいて本部の評価や選択を行うことがないよう、経営実態をありのままにきちんと開示しているかどうかを、「ホームページの充実度」「資本金、従業員数、店舗数、直営店比率の公開度」「フランチャイズ事業年数、企業設立年月、沿革の公開度」「出店数・閉店数(年間新規加盟数・解約数)」の4つの評価項目で確認します。
③店舗展開可能
加盟後、多店舗展開することが期待できるのかどうかを、「モデル店舗」「商品力」「商品供給の安定度」「商品開発力」「複数出店可能性」の5つの評価項目で確認します。
④加盟店支援力
本部が加盟店の成功と発展に必要不可欠な支援機能を備えているかどうかを、「開業サポート、開業前研修内容」「加盟店会の有無」「SV(スーパーバイザー)」「本部実施の販促内容」「不振店対策」「マニュアル」の6つの評価項目で確認します。
⑤店舗収益性
加盟店の成功の可能性と成功の度合いを、「モデル損益、営業利益率」「ロイヤルティ・その他の本部徴収金」「生産性(売上/人、売上/坪)」「初期投資額(投資回収期間)」の4つの評価項目で確認します。
⑥加盟店満足度
既存加盟店の満足度を「加盟店満足度」1項目に絞り込み、複数店舗経営率、途中解約率、加盟店からの訴訟率、契約更新率の4指標を用いて客観的に確認します。
本部情報は、「自分で見て」「自分で聞いて」「自分で感じる」事が大切です。納得いくまで「調査・分析」し「評価」を確定するまでは絶対に加盟しないようにしましょう。そして、フランチャイズ加盟は自己(自社)の責任であることを、いま一度、認識していただきたいと思います。