フランチャイズ契約では本部は立地診断や売上予測をしなければならないのか?

フランチャイズ本部による売上予測

フランチャイズ加盟者にとって出店場所の選定は、将来の業績に大きな影響をおよぼす非常に重要なことです。そのため、加盟者(希望者)は、(うまくいく)物件の紹介や、加盟者自身が選んだ物件の立地診断・売上予測など、フランチャイズ本部によるサポートを大いに期待します。
では、フランチャイズ契約において、フランチャイズ本部による立地診断や売上予測は義務なのでしょうか?

立地診断、売上予測は義務なのか? フランチャイズ契約書への掲載例

結論からお伝えすると、フランチャイズ本部だからといって、立地診断や売上予測は必ず行わなければならないものではありません。

AI(人工知能)を活用した売上予測サービスなども登場してはいますが、その精度を上げるためには、相当数(店舗数、運営年数)のデータが必要になります。しかし、これからフランチャイズ本部を始めようという企業では、分析可能な既存店が少ないケースがほとんどでしょう。
また、その店舗でうまくいくのか?売上はどれくらいになりそうか?という予測は、あくまでも将来の予測であり、経済動向・市場環境・加盟者の経営努力などによって大きく左右されるものです。
さらに、出店予定地が加盟希望者の近隣であれば、フランチャイズ本部よりも加盟店のほうが地元の情報に精通しており、より詳しい状況を把握しているケースもあります。
中小小売商業振興法やフランチャイズガイドラインにおいても、加盟希望者に対する情報開示事項には、立地診断の結果や売上予測値は含んでいません。

では、立地診断や売上予測に関して、フランチャイズ契約書には、どのように記載すべきなのでしょうか?

フランチャイズ契約書における、売上予測や立地選定に関する条文のサンプルが、「改訂版 フランチャイズ契約の実務と書式」に文例として掲載されていますので、その一部について引用させていただきました。

まずは、本部による売上予測の義務を否定する条文です。

第〇条(売上予測義務の否定)
1 フランチャイザーは、フランチャイジーに対して本件店舗及び本フランチャイズ・チェーン事業についての売上、経費、収益、損益等に関する予測値ないし予測値を提供する義務を追うものではなく、本件店舗の事業計画を作成する義務を負わない。フランチャイジーは、自己の判断と責任で本件店舗及び自ら営む事業の事業計画を作成しなければならない。

出典:神田孝(著)「改訂版 フランチャイズ契約の実務と書式(三協法規出版:2018年)」P355

第1項に、フランチャイズ本部(フランチャイザー)は予測を行わないこと、加盟者(フランチャイジー)は、自らの責任で、その店舗に事業計画を作成しなければならないことを記載しています。

次に、店舗の立地選定に関する条文です。

第〇条(店舗の立地選定)
1 フランチャイジーは、本件店舗の条件及び所在地の周辺環境等を調査し、自らの判断と責任で、自身が出店する商圏及び本件店舗所在地を選定し決定するものとする。

出典:神田孝(著)「改訂版 フランチャイズ契約の実務と書式(三協法規出版:2018年)」P355

加盟者(フランチャイジー)は、自らの責任と判断で店舗を選定・決定したものであることを記載しています。また、その他の条項では、開業後の業績は、経済動向・市場環境・加盟者の経営努力などによって大きく左右されるものであり、フランチャイズ本部は、その店舗の売り上げは保証しない、ということが記載されていました。

このように、フランチャイズ本部としては、その責任を回避するために、売上予測や売上保証はしないことをフランチャイズ契約書に記載します。
しかし、一般的には加盟希望者に対してモデル損益や収支シミュレーションなどを提示します。それは当たり前のことで、どれくらい儲かる事業なのかもわからずにフランチャイズ加盟する希望者はいません。また、前述したように、加盟者は開業にあたりフランチャイズ本部による立地診断や売上予測、物件紹介などのサポートを期待します。
フランチャイズ契約書に、本部の責任を回避するような条文を書いたところで、加盟者とのトラブルを完全に防げるわけではありませんし、実際の運営上、モデル損益や立地診断結果の内容やその提示方法に問題があれば、独占禁止法の違反行為(ぎまん的顧客誘引)にあたる可能性も出てきます。

フランチャイズガイドラインでは、

予想売上げ又は予想収益の額を提示する場合、その額の算定根拠又は算定方法が合理性を欠くものでないか。また、実際には達成できない額又は達成困難である額を予想額として示していないか。

としています。そのため、モデル損益や立地診断結果の基礎データとして根拠のある資料が必要になります。

フランチャイズ本部による立地診断や予測で適法とされる条件とは

モデル損益や立地診断結果には、その算出過程や根拠となる数値に客観性合理性正確性を持たせることが必要です。また、加盟希望者には具体的な調査方法や調査日時、時間帯などの調査状況についても説明します。
客観性、合理性、正確性を欠くような不適切な例としては、次のようなものがあります。

客観性を欠く事例

商圏人口を算出する際には、通常は自治体等の人口統計の数値を用いることになります。例えば、出店予定地の近くでマンション建設計画などがあった場合、この人口統計数値にマンション建設によって予測される居住者数を上乗せした人口を商圏人口として算定してしまうと、客観性を欠く情報となります。まだ建設計画の段階にあるマンションの入居者数は確定したものではなく、結果的には意図的に商圏人口を増加させたことになり、さも売上規模があるかのように加盟希望者を錯覚させかねません。
このような場合には、人口統計の数値を示したうえで、マンションの建設計画があること、マンションの総戸数などについて、不動産屋等が公表している内容を、客観的な情報として、そのまま伝えるという対応が必要です。

合理性を欠く事例

業態による違いはありますが、店前の通行量は、店舗の業績に影響を与える重要な情報となります。例えば、1日(24時間)の通行量を算定する場合に、通行量調査を1時間だけ行い単純に×24したものを1日の通行量と推定することは、非常に合理性を欠いたものとなります。時間帯によって通行量が違うことは容易に想像できますし、平日と休日、天候による違いなども想定できます。
このような場合には、曜日別、天候別、時間帯別など条件を変えて通行量を測定した結果を示すのがベストです。ただ、実際には全条件を網羅的に行うことは難しいでしょう。可能な範囲で複数条件での調査をしたうえで、実際に通行量を測定した日時や時間帯などの調査情報を一緒に提示するというのが現実的でしょう。

正確性を欠く事例

店舗の視認性や駐車場への入りやすさなどは、店前を通る顧客が店舗に入るかどうかを決める重要な要素となります。今は、Google マップなどを用いることで、店舗の周辺状況を確認することができます。しかし、マップに掲載されている画像は、リアルタイムにアップされているものではなく正確性を欠いたものとなります。夏になると街路樹に葉が生い茂り、遠くから看板が見づらくなったり、画像で見るより駐車場の入口が狭くて入店しづらい場合などがあります。
やはり、「現場」「現物」「現実」の三現主義が大事であり、机上ではなく、実際に現場で現物を観察して、現実を認識した情報をもとに判断する必要があります。

フランチャイズ本部による店舗物件の開発、加盟者への紹介

プロトタイプ店舗ができ上がり、フランチャイズ本部を立ち上げ、出店エリアが決まると、物件開発が重要になってきます。いくらフランチャイズ加盟者を募集し、順調に希望者が増えてきたとしても、実際に出店できる物件がなければ開業には至りません。加盟希望者が店舗物件を見つけてくることができればよいのですが、そう簡単に見つけることはできません。立地診断の結果、採算が合わなければ、いつまでも開業できない(フランチャイズ契約を締結できない)ことになります。そこで、フランチャイズ本部自らが物件開発を進めることも必要になります。

フランチャイズ本部が加盟希望者に物件を紹介するときの注意点としては、「フランチャイズ本部は、あくまでも物件紹介をするだけであり、物件の選定と最終的な意思決定は加盟希望者にある」というスタンスをつらぬくことです(フランチャイズ契約書もそのような記載とする事が前提)。

それでも、加盟希望者はフランチャイズ本部による見立てを聞いてきます。そのとき、フランチャイズ契約を進めたいからといって、「これなら絶対成功できますよ」「月に300万円の売上は固いですね」などいった、過剰なセールストークをしてはいけません。フランチャイズ本部の発言や説明によって誤解させるようなことがあれば、うまくいかなかった場合のトラブルは避けられないでしょう。また、フランチャイズ本部が加盟希望者に対して、特定の物件を強要すると本部の責任が問われることもありますので注意が必要です。

では、どの程度までのトークであれば大丈夫なのか?ということになりますが、「いい物件ですね」「直営店であれば出店すると思います」といった、多少のセールストークは問題ありません。これくらいであれば売上予測をしたことにはならないでしょう。ここでも、客観性、合理性、正確性を欠いたことを伝えていないか?ということが一つの基準になります。

最終的な意思決定は加盟希望者が行うものではありますが、フランチャイズ本部としては、加盟希望者が正しい判断ができるよう客観性、合理性、正確性のある情報を提供することが大事です。

フランチャイズ本部による立地診断方法の整備

アーリーステージの企業で、出店数が少ない場合には、これまでのデータの蓄積が少ないため十分な立地診断や、売上予測ができないことが一般的です。そのため、新店の立地評価などはフランチャイズ本部の経験則で行うケースがほとんどとなります。
加盟希望者に対して、立地診断結果などを提示する場合、フランチャイズ本部としては、

  • データの蓄積が少ないこと
  • 類似する条件の店舗が無いこと
  • フランチャイズ本部所有のデータでは正確な売上予測が困難であること

などの実情を加盟希望者に伝えてください。
また、十分なデータがない場合には、出店候補地と類似の条件の店舗を例示することは困難なため、なるべく近い条件の直営店の実績や、全店舗の平均値などの数値を提示します。ここでも注意点があります。このような情報は、フランチャイズ本部にとっての重要な秘密情報に当たりますし、数字は独り歩きしやすいので、決して紙媒体や電子データなどで渡すことはせず、その場で回収するなり、PCなどの画面で見せる程度とするようにしましょう。

ただ、フランチャイズ本部としては、いつまでもそのような方法に頼っているわけには行きません。直営店、フランチャイズ加盟店の増加に伴って、データに裏付けされた立地基準を整備していく必要があります。
立地基準の設定方法や売上予測については、また別のコラムで触れたいと思いますが、立地診断の3つの視点「商圏(面)」「動線(線)」「地点(点)」についてだけ簡単に紹介しておきます。

フランチャイズ本部の立地診断

商圏(面) 動線(線) 地点(点)
商圏の範囲(半径◯km、徒歩・自動車で◯分以内)、商圏人口(店舗に集客できる商圏範囲の人口)、来店する顧客が居住・勤務している地域の特性 店舗までの動線や方向(出店候補地への近づきやすさ、駅や施設などから店舗までの経路)、接近性(駅や施設などからの近さ、利便性)、競合店との位置関係 候補地や近隣の特性、店頭通行量(店の前をどのような人がどれ位通るのか)、視認性(店舗がはっきり認識できるか)、店舗の構造(出入口や柱、店舗設備などの位置や造り)

参考書籍:フランチャイズ研究会 著「フランチャイズ本部構築ガイドブック」(同友館)

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