フランチャイズ加盟者の募集で、成功している(しそうな)加盟者を集めるときには事業ビジョンが重要になります。それはなぜか?事業ビジョンとは?
Vision:事業ビジョンと達成ステップの策定とは
企業活動において外部環境の変化は、自分たちではどうしようもないことがほとんどでしょう。
外部環境の変化により、事業の行き先が見込めなくなる前に、これまでに自社が培ってきた強みや資産を生かし、新たな機会を捉えてイノベーションを起こしていく必要があります。
事業ビジョンとは、そのイノベーションが中・長期的にどこを目指すのか?ゴールを設定することです。
ビジネスプランニングの最初には、自社が向かうべき方向を見失わないよう、事業ビジョンとそこまでの達成ステップを策定しておく必要があります。
事業ビジョンを考え表現するには
経営者や事業リーダーがわくわくするものか
まずは経営者や事業リーダー自身が、わくわくするようなものになっているかが大きなポイントになります。経営者や、事業リーダー自らが、「よし、やってやる!!」と思えなければ、その事業が成功することは決してありません。
また、読み・聞く側にとってわかりやすく、はっきりとイメージを持って共感してもらえるよう、簡潔で明瞭、具体的に表現する必要があります。
自社が直面している事業機会や危機に対して、この事業には明確な存在意義があり、こんな素晴らしい事業はぜひ応援したい、一緒に取り組みたいと自然に思ってもらえる必要があります。
そして、事業ビジョンが壮大であればあるほど、事業の第一歩が確実に踏み出せるものであることが重要です。しかもその延長線上にビジョンの実現性がはっきりと感じられる必要があります。漠然と「5年後にこうなっていればいいなあ」というだけではなく、1~2年後のイメージを明確に想像できるように、具体的な一歩を考え、表現することが大事です。
事業ビジョンは将来のありたい姿
将来のありたい姿を定量的・定性的に具体的に表現します。例えば、以下のようなことがポイントになります。
・市場におけるポジション、シェア、顧客からの評価
・社会経済的価値の大きさ、影響
・自社の成長度合い(収益、組織・人材、運営)
目標は定性的と定量的の両面から
事業ビジョンに到達する過程における目標(マイルストーン)を立てます。「従業員が生き生きと働いている」といった定性的なものと、「売上:◯◯円、利益率:◯◯%」といった定量的なものの、両方の観点から立てるよいでしょう。
外部環境の変化は未来予測する
外部環境の変化を未来予測する必要があります。未来のことなど、誰にもわからないことですが、日頃から情報収集を行い、最後は自身の「経験」とそれに基づく「勘」が頼りになります。また、いくつかのシナリオ(良い状況、普通の状況、悪い状況)を考えておくと、不測の事態にも対応ができるようになります。
・市場・顧客の課題(嬉しいこと、嫌なこと、したいこと)
・社会、政治、環境、経済、技術
・競合他社の動向
重要で優先すべきアクション(Act)
ビジョンに到達するための重要で優先すべきアクションは何か?まず第一歩、我々は何をすべきなのか?いくつかある選択肢の中から、ビジョン達成のための重要で優先ずべきアクションを具体的に考えます。
フランチャイズ本部にとってのビジョンとは
フランチャイズ本部にとってビジョンを掲げることは必須です。自社内の従業員に対してはもちろんのことですが、加盟者(候補も含む)に対するメッセージとして重要です。
フランチャイズ本部として、会社のビジョンを掲げると同時に、加盟者も含めたフランチャイズチェーン全体としてビジョンを掲げる必要があります。
「フランチャイズ方式によってチェーンを拡大する理由」
「フランチャイズ加盟者にどのようになって欲しいか」
「○年までに、直営で◯◯店舗、フランチャイズ店で◯◯店舗」
など、定性的・定量的なビジョンを考えます。
私の所属するフランチャイズ研究会では、過去に「加盟者が本部を選択した理由」を調査したことがあります。加盟者は何を基準に加盟本部を選択したのか。一般的な加盟者(1~数店舗の加盟者)とメガフランチャイジー(30店舗、20億以上の加盟者)を比較すると、両者には以下の特徴があることが判明しました。
- 一般的な加盟者は「初期投資額の少なさ」や「経営上の自由裁量性」を重視している
- それとは対照的にメガジーは本部の「経営者の人柄」や「経営理念」を重視している
- 「経営上の自由裁量性」や「加盟金・保証金の安さ」、「ロイヤルティの安さ」を本部選択理由に挙げる割合が低いことから、メガフランチャイジーの方がフランチャイズビジネスの本質をより理解しているといえる
一般的な加盟者の本部選択理由 | 順位 | メガジーが最初に加盟した時の本部選択理由 |
初期投資が手頃 | 1 | 経営者の人柄が良かった |
チェーンシステムが信頼できる | 2 | 事業コンセプトに将来性があると感じた |
経営に自由裁量がある | 3 | 経営理念がしっかりとしていた |
チェーンの商品・サービスの内容がよい | 4 | マニュアルが整備されているなど、本部のノウハウがしっかりしていた |
FCは成功の確率が高い | 5 | 加盟店が繁盛しているなど、安定したFCビジネスを行っていた |
知名度が高い | 6 | 本部の教育システムや指導体制がしっかりしている |
技術・経験が活かせる | 7 | 事業コンセプトが優秀であった |
ロイヤルティが手頃 | 8 | 未完成のチェーンシステムだが将来性があると思った |
ビジネスノウハウが取得できる | 9 | 交渉担当者や責任者の人柄が良かった |
本部の強い勧誘 | 10 | 既存加盟店オーナーから勧められた |
知人・家族からの勧め | 11 | 本部の事業規模が大きかった |
取引先からの勧め | 12 | 運営について加盟店の希望が受け入れられるなど、自由度が高かった |
加盟店が多い | 13 | 加盟金や保証金が安かった |
加盟期間が手頃 | 14 | ロイヤルティが安かった |
参考文献: 「フランチャイズチェーン事業経営実態調査報告書」(平成14年10月 経済産業省) 「成功するメガフランチャイジー(同友館)」(杉本收・伊藤恭 編著) |
つまり、成功している加盟者ほど、本部の経営陣や理念・ビジョンを見て、加盟の判断を下しているのです。
自社の事業ビジョンは明確になっているでしょうか?そして、その内容を自社の従業員や加盟者(候補者)に対して、わかりやすく提示できているでしょうか?
今一度、確認していただきたいと思います。