フランチャイズ本部は儲かるのか?収益構造・コスト・事業計画の作り方を実務解説
このコラムのポイント
フランチャイズ本部は、加盟金やロイヤルティを受け取れるため「加盟店を増やせば簡単に儲かる」と思われることがあります。しかし実際には、加盟店募集、開業支援、研修、SV、人材、システム、商品・サービス開発など、本部側にも継続的なコストが発生します。FC本部の事業計画では、加盟店数だけを予測するのではなく、①1店舗あたりの本部収益、②加盟店を支援するコスト、③本部固定費、④出店時期、⑤加盟店の収益性まで組み合わせて考えることが重要です。
「フランチャイズ本部は、加盟金とロイヤルティが入るので儲かりますよね?」
FC本部の立ち上げをご支援していると、こうした話を聞くことがあります。
確かに、フランチャイズでは加盟者が自ら出店資金を投資するため、本部がすべて直営店として出店する場合と比較すると、本部側の出店投資を抑えながら事業を拡大できる可能性があります。
加盟時には加盟金や研修費が入り、開業後にはロイヤルティなどの継続収入も発生します。
一見すると、非常に収益性の高い事業に見えます。
しかし、実際にFC本部の事業計画を作ってみると、
「思っていたほど簡単には利益が出ない」
というケースも少なくありません。
なぜなら、FC本部は単にブランドを貸してロイヤルティを受け取る事業ではないからです。加盟店を開業させ、継続して支援し、商品・サービスを改善し、チェーン全体のブランドを維持していくための機能が必要になります。
このコラムでは、FC本部を一つの事業として捉え、「どこから収益が生まれ、どのようなコストが発生し、何店舗くらいから本部事業として成立するのか」を考えるための事業計画の作り方を解説します。
- 結論|FC本部は加盟店を増やせば儲かるわけではない
- フランチャイズ本部の収益は大きく「初期収益」と「継続収益」に分かれる
- 初期収益より「継続収益」で本部が成り立つモデルを考える
- FC本部にはどのようなコストがかかるのか
- FC本部の採算は「1店舗あたり」で考える
- FC本部の損益分岐点店舗数を考える
- 5年間のFC本部事業計画を作る
- 5年間の本部事業計画を数字で見る
- FC本部の事業計画では「3つのシナリオ」を作る
- 加盟店側の事業計画と本部事業計画はセットで考える
- 「加盟店が儲かるほど本部も儲かる」構造を目指す
- 本部組織の人員計画も事業計画に入れる
- FC本部の事業計画でよくある6つの失敗
- フランチャイズ本部の事業計画に関するよくある質問
- まとめ|FC本部の利益は「店舗数」ではなく「加盟店が成功する仕組み」から生まれる
結論|FC本部は加盟店を増やせば儲かるわけではない
最初に結論からお伝えすると、フランチャイズ本部は、加盟店が増えれば自動的に儲かる事業ではありません。
FC本部の利益は、大まかには、
加盟店から得られる収益 − 加盟店を獲得・開業・支援するコスト − 本部固定費
によって決まります。
つまり重要なのは、単純な店舗数ではなく「1店舗増えたときに、本部へどれだけ利益が残るのか」です。
例えば、1店舗から年間120万円のロイヤルティ等を受け取っていても、その店舗を支援するために年間100万円相当の人件費・システム費・その他費用が増えるのであれば、本部へ残る利益は20万円です。
逆に、効率的な本部体制を構築しながら加盟店が安定して利益を出し、継続的なロイヤルティ等を受け取れる状態になれば、店舗数の増加とともに本部収益も積み上がります。
したがってFC本部の事業計画では、店舗数 × ロイヤルティだけを計算するのでは不十分です。
フランチャイズ本部の収益は大きく「初期収益」と「継続収益」に分かれる
FC本部の収益構造を整理すると、大きく2つに分けられます。
1.加盟時・開業時に発生する初期収益
代表的なものには、
- 加盟金
- 研修費
- 開業支援費
- 店舗の設計・施工等に関する収益
- 開業時の商品・原材料卸、備品販売による利益
などがあります。
これらは、新しい加盟店が増えるたびに発生します。
加盟開発が好調な年には大きな収益になりますが、新規加盟が止まれば収益も止まります。
そのため、初期収益だけに依存するFC本部は、安定した収益構造とはいえません。
なお、保証金など、本部が将来返還することを前提として加盟者から預かる金銭は預り金ですから、キャッシュとして本部に入ってきても「本部収益」とは分けて考える必要があります。
2.開業後に発生する継続収益
代表的なものとして、
- ロイヤルティ
- システム利用料
- 広告・販促分担金
- 商品・原材料供給による利益
- その他の継続サービス料金
などがあります。
FC本部の長期的な経営では、こちらが非常に重要です。
例えば、1店舗から毎月10万円の継続的な本部収益が得られる場合、
10店舗なら月100万円、
30店舗なら月300万円、
50店舗なら月500万円
となります。
ただし、この10万円がそのまま利益になるわけではありません。
ここから加盟店支援や本部運営に必要なコストを差し引いて考える必要があります。
初期収益より「継続収益」で本部が成り立つモデルを考える
FC本部の事業計画では、加盟金を中心に考えすぎないことが重要です。
例えば、加盟金200万円 × 年間10社加盟=2,000万円 とすると、一見すると大きな売上になります。
しかし、翌年の加盟件数が3社になれば、加盟金収入は600万円になります。
加盟店募集は毎年同じペースで進むとは限りません。
市場・景気動向、競合FC、ブランドの状況などによって問い合わせ数も加盟契約数も変わります。
一方、既存加盟店が健全に営業していれば、ロイヤルティ等の継続収益は積み上がります。
したがって、長期的には、「新しい加盟店を取り続けなければ本部が維持できないモデル」ではなく、
「既存加盟店を支援することで本部も継続的に収益を得られるモデル」
を目指すことが重要です。
そのためにも、加盟店自身に十分な利益が残ることが前提になります。
FC本部にはどのようなコストがかかるのか

FC本部の事業計画では、収益と同時にコストを整理します。
大きく分けると、
- 本部を立ち上げるための初期コスト
- 加盟店を増やすためのコスト
- 加盟店を支援するためのコスト
- 本部組織を維持する固定費
などがあります。
FC本部構築時の初期コスト
例えば、本部構築に必要な活動は以下となります。
- FC事業の設計
- 商標登録
- マニュアル作成、研修体系の整理
- FC契約書、法定開示書面の作成
- 加盟案内書の作成
- 加盟募集Webページの作成
- 各種システムの構築、導入 など
これらの準備にかかる費用が初期コストとなります。
どこまで自社で対応するのか、外部専門家を利用するのかによって金額は変わります。
加盟店を獲得するためのコスト
加盟店を1社獲得するためにもコストがかかります。
例えば、
- FC比較サイトの掲載費
- Web広告費
- FC展示会の出展費
- 自社Webサイトの構築・維持費
- 営業担当人件費
- 説明会(会議室レンタル費など)
- 加盟候補者への営業活動費
などです。
このため、事業計画では単に「年間10社加盟」とするのではなく、「10社加盟してもらうために、いくら使うのか」まで考える必要があります。
加盟店を開業させるためのコスト
加盟契約後も、
- 店舗設計
- 開業準備
- 採用
- 研修
- 販促
- オープン支援
などに本部の人材が関わります。
特に、開業支援に社長や本部担当者が多くの時間を使っている場合、その人件費も実質的なコストです。
開業後の加盟店支援コスト
さらに、
- SVによる支援
- 定期研修
- マニュアル更新
- 商品・サービス開発
- 情報システムの維持管理
- 加盟オーナー会の実施
- 問い合わせ対応
などが継続的に発生します。
ここを削りすぎると、加盟店の業績低下や不満につながり、結果的にFC本部の収益そのものを悪化させる可能性があります。
FC本部の採算は「1店舗あたり」で考える
FC本部の事業計画を作るときにおすすめしたいのが「加盟店1店舗あたり、本部にいくら利益が残るのか」を計算することです。
例えば、次のようなFCがあったとします。
モデル例
1店舗から本部へ毎月入る収益が、
ロイヤルティ 6万円
システム料 1万円
商品供給による粗利益 3万円
だった場合、1店舗あたり月10万円、年間120万円が本部の継続収益になります。
一方、この店舗を支援するために、
SV(人件費、交通費等)
システム利用料、維持費
本部事務(人件費)
その他変動費
として年間30万円相当のコストが必要とします。
すると、
120万円 − 30万円=90万円
が、本部固定費を回収するための1店舗あたりの限界利益となります。
この考え方を使えば、本部が何店舗必要なのかを考えやすくなります。
FC本部の損益分岐点店舗数を考える
仮にFC本部全体の年間固定費が、
1,800万円
だったとします。
先ほどの例では、加盟店1店舗から本部へ残る年間限界利益が90万円でした。
すると、
1,800万円 ÷ 90万円=20店舗
となります。
このモデルであれば、単純化すると20店舗程度が継続収益だけで本部固定費を賄える一つの目安になります。
ただし、これはあくまで計算例です。業態によって、
ロイヤルティ設定、商品供給の有無、SV内容・頻度、加盟店支援の内容、本部人件費
などはまったく異なります。
したがって、「FC本部は○店舗になれば儲かる」という共通の答えはありません。
重要なのは、
本部損益分岐点店舗数= 本部固定費 ÷ 1店舗あたり年間限界利益
という考え方で、自社FCの数字を入れて確認することです。
5年間のFC本部事業計画を作る
FC本部の事業計画は、単年度だけではなく、5年程度で考えると全体像をつかみやすくなります。
例えば次の順番で作ります。
STEP1|加盟オーナー数を予測する
まず、1年目3社→ 2年目5社 → 3年目8社 など、各年に新たに加盟するオーナー数を想定します。
ここでは、強気な数字だけではなく、現実的に営業できる件数から考えます。
STEP2|開業店舗数を予測する
加盟契約数と店舗数は同じではありません。
契約しても、物件が決まらず翌年開業になる場合があります。
逆に、既存加盟者が2号店、3号店を出店するケースもあります。
そのため、新規加盟オーナー数と新規開業店舗数は分けて計画するのがポイントです。
STEP3|本部収益を計算する
各年度について、
初期収益=加盟金、研修費、開業支援費など
と、
継続収益=ロイヤルティ、システム利用料、商品供給利益など
を分けて計算します。
STEP4|本部コストを計算する
次に、加盟開発費、人件費、システム利用料・管理費、マーケティング費用、教育費、商品開発費、その他管理費
などのコストを計算します。
特に人員計画は、店舗数と連動させます。
STEP5|本部損益とキャッシュフローを確認する
最後に、いつFC事業単体で黒字になるのかだけではなく、黒字になるまでに最大いくら資金が必要なのかも確認します。
利益が出る前に資金が尽きてしまえば、事業計画として成立しません。
5年間の本部事業計画を数字で見る
非常に簡略化した例を示します。
以下は「この程度儲かる」という基準ではなく、事業計画をどのように組み立てるかを説明するためのモデル例です。
前提を、
1店舗あたり年間継続収益:120万円
新規開業1店舗あたり初期収益:150万円
とします。
| 年度 | 新規開業 | 年末店舗数 | 平均稼働店舗数 | 初期収益 | 継続収益 | 本部売上 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 3 | 3 | 1.5 | 450万円 | 180万円 | 630万円 |
| 2年目 | 5 | 8 | 5.5 | 750万円 | 660万円 | 1,410万円 |
| 3年目 | 8 | 16 | 12 | 1,200万円 | 1,440万円 | 2,640万円 |
| 4年目 | 12 | 28 | 22 | 1,800万円 | 2,640万円 | 4,440万円 |
| 5年目 | 14 | 42 | 35 | 2,100万円 | 4,200万円 | 6,300万円 |
ここでのポイントが「平均稼働店舗数」です。
例えば1年目に3店舗開業するとしても、すべてが1月に開業するわけではありません。
そのため、ロイヤルティ等の継続収益は、年間店舗数 × 12か月と単純計算するのではなく、できれば開業予定月まで置いて計算します。
まだ開業月がわからない段階では、平均稼働店舗数などを使って概算する方法もあります。

FC本部の事業計画では「3つのシナリオ」を作る
FC本部の計画は予定どおり進むとは限りません。
そこで、
標準シナリオ
最も現実的に考えられる加盟・出店数。
上振れシナリオ
加盟募集が好調で、多店舗出店も進んだ場合。
下振れシナリオ
加盟件数が少ない、開業が遅れる、既存加盟店の出店が止まる場合。
の3パターンを作っておくとよいでしょう。
特に重要なのは下振れシナリオです。
例えば、「予定していた加盟件数が半分になった場合でも、本部を維持できるか」を確認します。
FC本部を立ち上げるかどうかは、最も楽観的な計画ではなく、想定どおり進まない場合にも耐えられるかを見て判断する必要があります。
加盟店側の事業計画と本部事業計画はセットで考える

FC本部の事業計画で非常に重要なのが、加盟店の収益計画と本部の収益計画を別々に考えないことです。
例えば、本部のロイヤルティを高く設定すれば、本部収益は増えます。しかし、その分、加盟店に残る利益は減ります。
加盟店の利益率が低下すれば、
- 多店舗展開できない
- 解約が増える
- 加盟店募集で実績を示せない
- ブランド評価が低下する
といった問題につながります。
逆に、加盟店への支援を充実させても、本部側に支援原資が残らなければ継続できません。
つまり、
【加盟店の事業モデル】+【FC本部の事業モデル】
の双方が成立して、初めて持続可能なFCになります。
「加盟店が儲かるほど本部も儲かる」構造を目指す

理想的なのは、加盟店が成功すると、本部収益も増えるという構造です。
例えば売上歩合ロイヤルティであれば、加盟店の売上が伸びると本部収益も伸びます。
商品供給型であれば、加盟店の販売量が増えるほど、本部の商品供給利益も増える可能性があります。
一方、加盟店が赤字でも本部は加盟金だけで儲かるという状態では、長期的なFC事業にはなりません。
FC本部の事業計画では、「どうすれば加盟店の成功と本部の利益が同じ方向を向くか」を設計することが重要です。
本部組織の人員計画も事業計画に入れる
FC本部のコストで大きな割合を占めるのが人件費です。
しかし、最初から大手FCと同じ組織を作る必要はありません。
例えば、
| 成長段階 | 人員計画の考え方 |
|---|---|
| 立ち上げ~5店舗 | 既存社員との兼務を活用 |
| 6~20店舗 | FC責任者、SV、加盟開発等を段階的に専任化 |
| 21~50店舗 | SV複数化、教育・開発・管理等の専門機能を強化 |
というように、店舗数に合わせて人材を増やします。
ここでも、人を採用してから店舗を増やすのか、店舗が増えてから採用するのか、というタイミングが重要になります。
加盟店が増えてから慌ててSVを採用しても、すぐに加盟店支援ができる人材になるとは限りません。
そのため、少し先の店舗数を見ながら人員計画を作ります。
本部の店舗数別の成長段階については、以下のコラムで詳しく解説しています。
FC本部の事業計画でよくある6つの失敗
1.契約数=開業店舗数として計画する
加盟契約しても開業まで数か月かかるケースがあります。加盟数と開業数は分けて計画します。
2.加盟金を中心に事業計画を作る
新規加盟が止まると、本部収益も急減します。既存店からの継続収益で本部運営を支えられる構造を確認します。
3.加盟店募集にかかるコストを入れていない
10加盟を獲得するために必要な広告費・営業費まで計画します。
4.社長や社員の支援工数を無料で考える
人が動けばコストが発生します。特に開業支援、SV、問い合わせ対応の工数を把握します。
5.加盟店の収益性を楽観的に置く
本部収益の前提となるのは、加盟店が継続営業できることです。好調店舗だけではなく、平均・下振れも確認します。
6.計画どおり進む前提しか作っていない
加盟募集の遅れ、物件不足、人材不足などは十分起こり得ます。必ず下振れシナリオも確認します。
フランチャイズ本部の事業計画に関するよくある質問
FC本部は何店舗くらいになれば黒字になりますか?
決まった店舗数はありません。ロイヤルティ、本部支援内容、人件費、商品供給利益などによって大きく異なります。「○店舗」という相場を探すより、本部固定費÷1店舗あたり年間限界利益から自社の損益分岐点を算出する方が適切です。
加盟金を高くすれば本部は儲かりますか?
短期的な初期収益は増えますが、それだけでFC事業の収益性は判断できません。加盟者に提供する価値、加盟店の投資回収、本部の開業支援コストなどとのバランスで設計する必要があります。
加盟金・ロイヤルティについては以下のコラムで詳しく解説しています。
FC本部の事業計画は何年分作ればよいですか?
まずは5年程度で作ると、立ち上げから本部黒字化までを把握しやすくなります。ただし、毎年実績との差異を確認し、ローリングで更新することが重要です。
FC本部の赤字期間は問題ですか?
立ち上げ時には本部構築、人材、加盟店募集などへの先行投資が発生するため、一定期間赤字になるケースはあります。重要なのは、いつ黒字化するのか、その前に最大でどれだけ資金が必要になるのかを事前に把握しておくことです。
まとめ|FC本部の利益は「店舗数」ではなく「加盟店が成功する仕組み」から生まれる
フランチャイズ本部には、加盟金、研修費、ロイヤルティ、システム料、商品供給利益など、様々な収益源があります。
しかし、本部側にも、加盟店募集、開業支援、SV、教育、システム、商品・サービス開発、本部人材、管理などにかかるコストが発生します。
したがって「加盟店が50店舗になれば儲かる」というように、店舗数だけで本部事業の収益性を判断することはできません。
FC本部の事業計画では、
1店舗から得られる本部収益
1店舗を支援するためのコスト
本部固定費
加盟・開業の時期
加盟店自身の収益性
を組み合わせて考える必要があります。
そして、本部事業の長期的な収益を考えるうえで最も重要なのは、加盟金を何件獲得するかではありません。
既存加盟店が利益を出し、事業を継続し、多店舗化できる状態をつくることです。
加盟店が成功すれば、ロイヤルティなどの継続収益が積み上がり、既存加盟店の多店舗展開も進み、成功実績が新たな加盟募集にもつながります。
つまり、加盟店の成功が、本部収益の土台になる。
この前提に立って本部と加盟店の双方が成立する事業計画を作ることが、持続的に成長できるフランチャイズ本部づくりの基本です。





















