フランチャイズオーナーはどれくらい儲かるのか?加盟店の収支シミュレーション

収支モデル(初期投資モデル、損益モデル)は、フランチャイズ加盟する際にどれくらいの初期投資が必要なのか、そしてその投資をした結果どれくらい儲かるのかをシミュレーションしたものです。
加盟金やロイヤルティの設定、フランチャイズ本部の事業計画の策定、加盟希望者への説明の根拠など、フランチャイズ本部を立ち上げる際の基礎となる重要なものです。

フランチャイズ・ビジネスにおける収支モデルのシミュレーション

加盟金やロイヤルティを設定する際には、同業他社や類似する業種の状況を参考にしながら、加盟店の収支モデルの検討、本部の中期事業計画策定の中でシミュレーションを繰り返し、妥当な金額を設定することになります。

また、ここで検討した収支モデルは、加盟希望者へ提示する加盟案内書へ記載します。具体的な事業展開のイメージをしてもらうためです。

収支モデルのシミュレーションを行う際には、直営店の実績を参考にして算定することになります。出店エリアや立地条件などによって、人件費や地代家賃などの違いがありますので、想定できる標準的な数値をベースに検討することになります。また、駅前ビルインの小型店舗、住宅街の中型店舗、ロードサイドの大型店舗など、いくつかの出店パターンがある場合には、そのパターンごとに収支モデルを作成すると良いでしょう。

フランチャイズ加盟における初期投資額(開業資金)設定のポイント

初期投資額(開業資金)を設定する場合には、開業に必要な資金を積み上げて考えていきますが、この時、投資回収という視点を忘れてはいけません。加盟希望者にとって投資回収期間は、「投下資本をどれくらいの期間で回収できるこのビジネスなのか?」という、フランチャイズ加盟を判断する重要な情報となります。
投資回収期間をフランチャイズ加盟者の属性(個人/法人)の違いから捉えてみると、一般的には、個人の場合は資金調達力に乏しいため、できる限り早く投下資本を回収しないと資金ショートを起こしてしまう可能性があります。また、大きな開業資金を必要とする業態をフランチャイズ展開するならば、加盟者のターゲットは必然的に(資金調達が可能な)法人となります。

加盟希望者がフランチャイズ加盟をして事業を始める際には、初期投資モデルに記載されている項目以外にも、初期投資として必要なものがあります。例えば、店舗物件の契約金・敷金・保証金・仲介手数料、開業するまでの家賃や人件費、新しく法人を立ち上げて事業をスタートする場合には会社設立費用も発生します。これらは、本部が受け取る金銭ではありませんが、初期投資モデルに、これらの記載があると親切です。これらの記載をしない場合においても本部としては、加盟希望者が負担する初期投資額として把握しておき、特にフランチャイズ加盟で起業する個人などの場合は、初期投資モデル以外にもこういうものがかかるということを説明してあげると親切でしょう。

初期投資モデル作成のポイント

初期投資モデルを作成する際には、開業時に必要となる諸費用の項目を抽出し、項目ごとにいくら必要になるかを設定します。

開業に必要な金額は、業種・業態によって大きく違いがあります。有店舗型か無店舗型か、店舗面積の大小や席数、厨房機器や什器等必要設備の有無やその内容、初期在庫はどれくらい持っておく必要があるかなどにより変動します。当然、無店舗型のビジネスであれば開業資金は低く、飲食業のように厨房設備や内外装費工事、什器の導入が必要となるビジネスでは、高い開業資金を設定することになります。

フランチャイズ加盟店の収支シミュレーション

加盟金

フランチャイズ契約締結時に加盟者から本部に支払われる金銭です。加盟金は、契約によっては「権利金」「入会金」「分担金」などと呼ぶこともあります。加盟金は、加盟者側がフランチャイズ加盟によって得られるメリットに見合う額でなければなりません。加盟金の額の設定に当たっては、それが第三者から見て暴利に当たるようなレベルであってはならず、同業他社の事例にならいながら妥当な金額を探っていくことになります。加盟金の性質は、一般的には、

  1. 営業許諾料(営業権の付与)
  2. 商標・サービスマークの使用料(ブランド使用料)
  3. 開業準備費用(立地診断費用・開業前研修費用等)
  4. ノウハウ開示の対価(ノウハウ使用料)

として支払われるものとされています。契約によっては、加盟金は、ⅰ~ⅳの一部のみの対価とする場合があり、そのような場合には「開業前研修費」「開業サポート費」「マーケティング費用」などという名目で別途徴収とすることがあります。

保証金

保証金とは、加盟者が差し入れる担保としての性質を持つものです。契約が終了した時には、担保としての必要性が無くなるため、本部は加盟者への債権が残っている場合には、その金額を差し引いて返金することになります。ロイヤルティや本部と加盟者との間の取引金額、連帯保証人の設定有無や人数などをもとに、適切な金額を設定する必要があります。

工事費(外装・内装・設備一式など)

出店する店舗に必要となる外装・内装費用や設備金額を設定します。これらは、店舗の面積や席数に応じて変わるため、シミュレーション上、何坪・何席の店舗を想定しているのか、その前提を設定しておく必要があります。店舗タイプ(ビルイン、路面店、ロードサイドなど)が複数ある場合には、そのタイプ別に複数バージョンを検討しておくとよいでしょう。
また、この金額には設計料が含まれているのか、設計や施工は、本部又は本部が指定する業者へ依頼する義務があるのかなどの説明を加えておくと、後々のトラブルが防げます。

販促等経費

加盟店舗の開業までに行う販促活動(チラシ作成、ポスティング、WEB広告など)にかかる広告・販売促進費などにかかる費用を設定します。開業前販促の実施が義務なのか、チラシの作成等が、本部又は本部が指定する業者へ依頼する義務があるのかなどの説明を加えておくと、後々のトラブルが防げます。

フランチャイズ・ビジネスにおける損益モデル

損益モデルは、以下のようなものになります。開業当初と平常の運営になった時では、売上やコストなどに違いがあることが一般的なので、1年目とそれ以降の損益モデルを用意しておくと、より現実の数値に近いシミュレーションになります。

フランチャイズ加盟店の収支シミュレーション

売上高

売上高は、「客数×客単価」で構成され、月間売上高の平均値となるように設定します。「客数」は、新規顧客の獲得と既存顧客の購買頻度で構成され、「客単価」は、商品単価と買上点数とによって構成されます。
飲食店などは、開業時にはオープン特需で売上は高くなるものの、その後、平常値へ安定するようになります。美容業などサービス業は、顧客が定着するまで時間がかかるため、開業当初の売り上げは低く、一定期間を経て顧客が定着化され平常値へと安定します。また、フィットネスクラブなど会員制ビジネスで一定数の会員を集めてから開業をする場合は、開業当初でも一定の売上が確保できますが、その後、新規入会者の増加と一定の離脱の間で平常値へと安定します。
本部は、このような数値の動きを熟知しておく必要があり、加盟者が安定した売上を確保できるようにノウハウを提供するとともに、定期的な経営指導を行い、売上を安定させる必要があります。

売上原価

売上にかかる原価(商品、食材、材料等)を設定します。
「売上原価=期首(月初)在庫+仕入高-期末(月末)在庫」
恒常的に発生する廃棄ロス(例えば、飲食業であれば食材のロス、小売業であれば商品のロス、美容業であればパーマ液などの材料のロスなど)があれば、これも、実績をベースに廃棄率(額)を設定し、売上原価に含めておいた方がよいでしょう。

売上総利益(粗利益)

「売上高-売上原価」により算出します。売上総利益は、商品(サービス)の力を示すものです。

ロイヤルティ

契約締結後に、加盟者から本部に定期的に支払われる金銭のことであり、継続的に提供されるフランチャイズパッケージに対する対価です。本部から加盟店に提供されるものは様々あり、これらの対価をまとめて「ロイヤルティ」として徴収することもあれば、それぞれを別々の科目として徴収することもあります。
継続的に提供されるフランチャイズパッケージとは、「商標の継続的使用の許可」「継続的な経営・運営指導(SV)」などがありますが、それ以外にも、ITシステムの利用や本部による宣伝広告などがあり、ロイヤルティには、これらの費用が含まれる場合もあります。逆に、商標の継続的使用料だけを「のれん代」「看板料」と称して徴収する場合もあります。
いずれにせよ、加盟店に対しては、毎月徴収される金銭が何の対価なのかをきちんと説明しておく必要があります。

人件費

正社員やアルバイト・パートなど人件費平均を設定します。一般的には、加盟店オーナーの給与(取り分)はこの項目には含まず、「利益」に含まれると考えます(後述)。採用・教育費、法定福利費、福利厚生費なども人件費に含めて考える場合もあります。

地代家賃

有店舗型の業態であれば、立地条件や店舗面積等に応じて地代家賃の金額を設定します。
例えば、ロードサイド型の店舗展開の場合には駐車場の確保も必要となり、その分、高額になる可能性があります。立地条件や店舗タイプ(ビルイン、路面店、ロードサイドなど)など、出店パターンが複数想定される場合には、そのタイプ別に複数バージョンを検討しておくとよいでしょう。
なお、加盟店オーナーが店舗物件を所有している場合には、地代家賃は不要になりますが、本部が損益モデルを策定する際には、このような個別事情まで考慮する必要はありません。

水道光熱費

水道代、電気代、ガス台などの水道光熱費の月平均額を設定します。季節変動が激しいビジネスであれば、年間の水道光熱費を12カ月で割ったものを月平均額として設定します。

その他経費

これまでに掲げたもの以外の雑多な経費をまとめて設定します。そのビジネスならではの恒常的に発生する経費がある場合は、この項目に含めず、一つの項目として設定する方がよいでしょう。

減価償却費

減価償却費を設定する場合、減価償却資産の金額をその耐用年数で割り、さらに12カ月で割ったものを月平均額として算出する単純な計算方法をよく用います。
なお、減価償却費の項目を設けない場合もあります。これは、減価償却費は現金の支出がない経費であることから、加盟希望者に対しては毎月の現金ベースで開示した方が説明しやすいためです。また、この方が損益モデルの見た目として利益が多く見えるということもあります。減価償却費を載せない場合、「減価償却費は含まない」といった説明文を加えておくと、後々のトラブルが防げます。

利益(オーナー利益)

売上から各経費を除いた利益で、オーナーの手取り(給与)の目安となるものです。
各経費の設定次第ではありますが、損益モデルには、事務用品など細々とした経費、税金、借り入れに対する返済額などが省かれていることも多く、ここで設定した金額の全てがオーナーの手元に残るわけではありません。加盟希望者に対しては、そのような点もしっかりと説明しておくようにしましょう。
なお、減価償却費を設定しない損益モデルでは「償却前利益」と表示する場合もあります。

フランチャイズ契約とも関連する初期投資モデル・損益モデルと投資回収との関係

前述したとおり、初期投資モデルと損益モデルを作成する上では、投資回収という視点を持つことが重要です。初期投資モデルで設定した投下資本が、同じく設定した損益モデルにより、どれくらいの期間で回収できるのか?その合理性の検証は必須です。
投資回収の計算方法には、その目的や諸条件によっていくつかの手法がありますが、フランチャイズビジネスモデルの検証という点では、「投資回収期間法」が最も簡便でわかりやすい方法です。
「投資回収期間(年)=初期投資額÷(年間税引後当期利益+年間減価償却費)」

業態には寿命があり、時とともに陳腐化していくことは仕方のないことです。想定される投資回収期間が長すぎると、業態が陳腐化し競争力を失って利益を確保できなくなり、投下資本を回収できなくなるリスクが発生します。当然、本部としては、業態が陳腐化する前に新しい商品・サービスの開発やマーケティングの展開、場合によっては新しい業態への転換など抜本的な改革を図る必要があります。

フランチャイズ・ビジネスでは、その契約に契約期間が定められます。契約期間は、本部と加盟者の双方にとって、投下資本を回収できて利益を上げることのできる合理的な期間を下回らないこと(投資回収期間が加盟契約期間内であること)が前提となります。投資回収期間が長すぎる又は契約期間が短すぎで、加盟者が投下資本を回収できないまま契約終了となってしまうようでは、フランチャイズ加盟をしてビジネスを始める意味がありませんし、加盟者と本部のトラブルに発展する可能性もあります。

フランチャイズ加盟店の収支シミュレーション


以上、加盟店の収支シミュレーションについて解説しました。
本部としては、多くの加盟希望者を募りたいので、より多くの利益が出て、より短い期間で投資回収ができるような収支モデルを作成したくなりますが、客観的で合理的な根拠がある数字の積み上げによる実現可能な数値でなければなりません。いくら数字だけごまかしても、その実態はすぐにばれることになります。
加盟者に十分な利益が出ない、投資回収ができないような状態であれば、フランチャイズ加盟募集などせず、業態のブラッシュアップに全力を注ぐべきことは当然のことです。加盟者が利益を上げられないようでは、フランチャイズ展開をする意味はありません。

参考書籍:フランチャイズ研究会 著「フランチャイズ本部構築ガイドブック」(同友館)

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