フランチャイズ(チェーン)ビジネスでも活用されるM&A戦略

フランチャイズとM&A

コロナの影響もあり、フランチャイズチェーンが抱える課題が顕著になっています。
「コロナの影響を受けて新たな業態の開発が急務である」
「頻繁に変わる顧客ニーズに適応するために新業態の開発は必要だが思うように進んでいない」
「労働人口の減少から働き手の不足が発生している」
「低価格化競争と原価の高騰によるコスト増加の負担が大きい」
「オーナーの高齢化に伴い本部および加盟店の事業継続に不安が出てきている」

中小企業を襲う大廃業時代 ~社長の高齢化と後継者不在の問題~

日本国内における中小企業の状況に目を向けると、社長の高齢化と後継者不在が主な原因となり、休廃業や解散は年々増加しています。コロナの影響もあり、このままでは廃業する企業は増える一方です。
東京商工リサーチの「全国社長の年齢調査(2019年12月31日時点)」によると、全国社長の平均年齢は、62.16歳となり調査開始の2009年以降で最高年齢を更新、社長の年齢分布は、70代以上が構成比30.37%で初めて最多レンジとなりました。さらに、社長の年齢別の企業業績は、「増収」は30代以下で58.6%と最も大きく、年齢と反比例して減少していき、70代以上では42.5%にとどまっています。

社長の高齢化問題を「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義される「健康寿命」という点から考えてみたいと思います。
健康寿命は徐々に伸びてはきているものの、男性は約70歳、女性は約73歳となっています。前述の通り、日本の社長の最多レンジが70代以上ということですから、これは、多くの経営者にとって、事業承継が差し迫った問題であることを意味しており、後継者問題待ったなしの状況といえます。

事業承継先として親族内承継は減少、半分以上の会社が外部に引き継がれており、親族外承継という選択肢は当たり前になってきています。経営者が元気なうちに、親族や社員に限らず、後継者に実権を渡すべき時代がきているのです。

事業承継の問題がある一方、新しい事業に取り組む企業も多くあります。しかし、人材・技術・ノウハウなどの不足から簡単には進んではいないと思われます。また、多様な働き方が広まるなかで個人の起業も進んでいますが成功は容易ではありません。

このような背景のもと、M&Aによる「親族外への承継(引き継ぐ企業)」と「新規事業・起業への取り組み(引き継がれる企業)」のマッチングが増えています。

成長しつづけるフランチャイズ業界 ~しかし加盟店オーナーの高齢化・事業承継問題も~

フランチャイズ業界における現在の売上規模は26兆円を超えており、40年以上にわたり成長を続けている希少な業界です。これは、フランチャイズのビジネスモデルが優れている証拠でもあります。
フランチャイズビジネスでは、個人の起業だけでなく、法人加盟による新規事業の展開で多数の実績・成果が出ています。フランチャイズビジネスは地域社会・経済・消費者を支える重要な役割を果たしています。

フランチャイズ統計情報2019年度

しかし、日本にフランチャイズがやってきて約50年、フランチャイズ業界においても、加盟店オーナーの高齢化・事業承継が問題になっています。経営不振、高齢化等で加盟店の減少が見込まれる中、同一のフランチャイズチェーン内、あるいはフランチャイズチェーンを超えた加盟店の譲渡・集約を行うことは必要不可欠です。

既にフランチャイズ先進国では、フランチャイズ本部やフランチャイズ加盟者のM&Aは事業承継の一部として活発に行われています。フランチャイズ×M&Aを推進することは、フランチャイズ業界にとって、企業や個人にとって、そして我が国が抱える課題を解決するためにも重要な取り組みです。
日本のフランチャイズ本部も取り組み始めています。
例えば、ファミリーマートでは、「加盟オーナーの相続人については、契約の残存期間に限り、その地位を承継することができる」としており、法定開示書面に明文化しています。これは、フランチャイズ業界全体を見渡しても非常にまれなケースです。

⑤加盟者(法人の場合はその代表者)または補助者兼連帯保証人、補助者のいずれかが死亡したとき。
⑥加盟者が法人の場合その代表者が交替したとき。
※⑤、⑥の場合
フランチャイズ契約は、加盟者(法人の場合はその代表者)・補助者兼連帯保証人・補助者の意欲・適性に対する信頼を基礎とするものですので、加盟者の「加盟者としての契約上の地位」、補助者兼連帯保証人、補助者の「補助者としての地位」 は承継されません。ただし、上記の相続人は、ファミリーマート本部が認める場合 、契約の残存期間に限り、その地位を承継することができます。

※ファミリーマート情報開示書面 P29 (8)契約の当然終了より抜粋

また、ワークマンでは、2016年3月期から、フランチャイズ加盟店店長の後継者育成に乗り出しています。約半数の経営者が子供や希望する従業員への「事業継承」をしているとのことです。

フランチャイズビジネスにおいて様々な場面で活用されるM&A

フランチャイズ(チェーン)業界におけるM&Aは、事業承継の解決だけではなく、本部の成長戦略の実現に向けた取り組みとしても活用されています。

新業態の売却・買収

  • 自社の規模感では思うほど伸びなかった新業態を大手チェーンが中堅チェーンに売却(中堅チェーンにとっては十分な事業規模)。
  • 小規模チェーンが立ち上げた新業態で成長性は見込めるが、自社だけでは更なる発展が難しいと判断し大手チェーンの傘下に入ることで全国展開を目指す。
  • 直営店は自社でやるが、フランチャイズ展開の権利のみを、展開実績のある同業or他業界大手チェーンに売却することで資本を持たず収益率を向上する。

財務バランス確保のための直営店・エリア権利売却

  • 不採算事業の売却により多額の利益の獲得、事業構造の根本的な改革を実現できる。
  • 自社にとっては不要事業であっても、他社にとっては必要な事業であるケースもある。
  • 売却利益に加えて、不採算事業に投入していた経営資源が余裕資産として残り、それらを主力事業に集中させる事で、全社的な収益構造の改善を図ることができる。

既存(直営)店引継ぎ型のフランチャイズ展開

  • すでに営業・実績のある直営店をそのまま引き継いで独立・開業が出来るフランチャイズ制度の構築。
  • 加盟者は、物件探し・設備準備の時間が省略できるうえ、安定キャッシュフローが見込みやすい。開業後のトラブルも起きづらい。

本部・加盟店オーナーの事業承継

  • 本部や加盟店オーナーの高齢化、健康状態の不安に伴い、万が一に備えた事業承継の準備。後継者不在を原因とした廃業を回避するための親族外承継(M&A)の準備。
  • オーナーの急死に伴う、事業継続の為の専門家による支援と事業引継ぎ(売却)先のリサーチ。

エリア展開戦略(拡大・縮小)

  • 苦手なエリアへ拡大展開するため、そのエリアを得意とする中堅・小規模チェーンを買収して速やかな展開を図る。
  • ドミナントエリアから離れた直営店を、同エリアで他業態のチェーン運営で実績のある他社に売却することで経営効率を上げる。

フランチャイズ(チェーン)ビジネスにおけるM&Aの具体的活用事例

事例1|ファストフードチェーン:顧客層拡大・バリューチェーン強化

A社はリーズナブルな価格帯でのファストフードを提供。既存事業とは異なる客層獲得のため、ファミレス、ハンバーグ、丼もの等チェーンのM&Aを実施しました。さらに、A社の強みである商品の調達・流通・販売のマーチャンダイジング機能をより強化するため、スーパーマーケットも買収。今後も外食産業だけに留まらず、小売業界なども視野に入れ、調達・流通・販売の一体化していくことを狙いとしています。

事例2|ファストフードチェーン:業態拡大・提携先の従業員を守る

B社は既存事業以外の業態の拡大を目指し、うどんチェーンを完全子会社化。その後、人気ラーメン店を複数運営するU社との資本提携を実施。B社の掲げる業種、業界を超えた価値提供を目指すビジョンと、U社を成長させて従業員を守るという方向性が一致したうえでの経営判断。ガバナンスの強化やグローバル展開を見据えたM&Aであるという点に注目が集まりました。

事例3|フランチャイズチェーン:既存店引継ぎ型のフランチャイズ加盟

フランチャイズ加盟による開業にあたり、直営店など、すでに営業している店舗をそのまま引き継いで独立・開業が出来る制度を導入。加盟者からすると物件探し・設備準備の時間が省ける上、過去の実績から一定の収益が予想され、安定した売上が見込めます。本部としては加盟店募集もしやすく、開業後のトラブルも発生しづらいという利点があります。

事例4:ファストフードチェーン:両社のノウハウを組合わせた新展開

D社は、和食居酒屋を運営しているW社と資本業務提携を締結。W社は居酒屋が主軸となっており、国内だけで約110店舗、海外にも複数店舗を展開しており、和食業態での店舗の運営ノウハウを有しています。D社は自社のフランチャイズ店舗の運営ノウハウとW社のノウハウを組合わせ、和食のフランチャイズの店舗を増やしていく計画としています。

事例5:テイクアウトフランチャイズ本部:展開地域拡大・異業態拡大

E社は、複数業態を展開するY社を子会社化。E社は関東の約170店舗に比べ、関西では17店舗と店舗数を拡大できていない状況でした。一方、Y社は関西での店舗展開に強みを持ち複数業態を展開。E社は西日本でフランチャイズ展開を行う際に、Y社を西日本エリアの本社機能として据え管理体制を確立。異業態に関しても、E社のフランチャイズ店舗の運営ノウハウを活かした店舗拡大を標榜しています。

事例6|飲食フランチャイズ本部:本部オーナーの事業承継

F社では、社長の健康上の問題が発生。大病を機に将来に対する不安があり、万が一のことを想定して、借入だけは清算しておきたいとの意向になりました。F社の売却対象事業は小型店が中心で、低投資型の出店でフランチャイズ展開も可能。今後数年で数十店舗の出店を計画する中堅企業Z社が、計画の実現に効果的であるとの判断からM&Aが成立しました。


以上のように、フランチャイズ業界においても、事業承継問題の解決にとどまらず、成長戦略の実現に向けてM&Aという手法を使う動きが当たり前になっています。今やM&Aはフランチャイズチェーンにとって有効な経営手段の一つとなっています。

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