近年、フランチャイズビジネスの世界に“静かな大変革”が訪れています。
それは、AIの急速な進化によって、本部の業務そのものが根本から変わりつつあるということです。
マニュアル作成、加盟店募集資料の作成、収支シミュレーション、店舗分析、SV支援……
これまで人手と時間をかけていた仕事の多くが、今やAIによって数分で処理できる時代になりました。
私自身もAIを活用しながら考えたことは、「AIがこれほど進化したのなら、フランチャイズコンサルタントの仕事は不要になるのでは?」という疑問です。
しかし、私がフランチャイズ本部構築のコンサルティングで行っていることを、改めて棚卸しをしている中で気づいたことがあります。
「AIは確かに“作業”を劇的に効率化するが、フランチャイズ本部という仕組みの本質(設計・判断・統治)は、今後さらに専門家が必要になる領域だ」
ということです。
そして、フランチャイズ本部立ち上げを考えている企業こそ、“AI時代の本部構築とは何か”を理解しておかなければなりません。
このコラムでは、AIが変える本部機能と、AIでは代替が難しいコンサルティング価値について、体系的に解説します。
AIが急速に進化する中で、本部業務はどう変わるのか?
フランチャイズ本部の運営には「作業」と「判断」があります。例えば、
- フランチャイズマニュアルの作成
- 加盟開発用資料(パンフレット)の作成
- 加盟希望者の質疑応答
- 加盟店収支モデルの作成
- 日報等、各種店舗データの分析
- 店舗チェック
- 本部の業務管理
これらは膨大な“作業”であり、 フランチャイズ本部のリソースを圧迫する原因でした。
ところがAIの登場により、この構造は大きく変わります。
AIが圧倒的に得意な領域、強みは明快です。
- 情報整理
- 定型文書作成
- パターン抽出
- 損益計算・分析
- 異常値検知
- 画像判断
- セールス資料生成
つまり 「再現できる作業」「ルールに基づく作業」はAIが代替できます。
実際、AIは以下のような本部業務をほぼ自動化できます。
▼(1) マニュアル作成・標準化業務はほぼAIに置き換わる
“マニュアルはオペレーションの標準化に不可欠”であり、フランチャイズ本部にとっては商品ともいえる重要なものです。
従来は、
- 店舗オペレーションの聞き取り
- 写真・動画撮影
- テキスト化
- 手順書作成
などに膨大な時間がかかりました。しかしAIなら、
- 店舗動画 → 自動で標準作業手順書を作成
- Q&Aデータ → よくある質問集に自動反映
- 加盟店からの質問 → AIが24時間回答
など、「マニュアルを作る」という仕事(作業)自体が、ほぼ不要になります。
▼(2) フランチャイズ契約書のドラフト、法定開示書面の作成・チェックもAIが得意
AIによって、フランチャイズ契約書のドラフトも作成できますし、
- 項目漏れはないか
- 契約書の条文間で矛盾はないか
- 誇大な説明になっていないか
といったチェックが瞬時に行えます。
なお、2021年の中小小売商業振興法改正では、 “加盟希望者への十分な情報提供”が強調されました。
法定開示書面に求められる項目、 フランチャイズ・ガイドラインに沿った説明内容など、 これらは基準が明確で、チェック項目が決まっているためAIが最も得意な領域です。
▼(3) 加盟者募集資料・損益モデル作成は完全自動化の時代へ
これまで、加盟開発担当者は
- 加盟説明資料(パンフレット)
- 収支モデル・事業計画事例
- LP(ランディングページ)
などの作成を手作業で作っていました。AIはこれをすべて自動生成できます。
しかも、 「立地条件別」「年齢・職種別」「法人向け・個人向け」など、ターゲットごとに最適化した資料まで数秒で作れるようになっています。
▼(4) SV(スーパーバイザー)の定型業務もAIが代替
SVは加盟店の現場支援を行う重要な役割ですが、 その多くは“データチェック”に使われていました。
AIなら、
- 売上・原価・人件費の異常
- 勤怠データの不正
- 客単価の変化
- 店舗画像からのクレンリネス判定
- 顧客のレビュー分析
など、これらを全て自動化できます。
つまり、 SVの“作業”はAIが担い、“人としての支援”にだけ集中できるようになります。
AIでも絶対に代替できない本部・コンサルタントの役割
ここからが本題です。
AIは本部業務の大部分を効率化しますが、 AIでは容易に代替できない領域があります。
これは、フランチャイズ本部立ち上げを考える企業が最も理解すべきポイントです。
(1) フランチャイズの“ビジネスモデルの設計”はAIでは難しい
AIができるのは“既存モデルの改善”まで。
- どんな業態をFC化するべきか
- 本部機能をどう構築するか
- 加盟金をどう設計するか
- ロイヤルティの体系をどうするか
- 直営とFCのバランスをどう取るか
- 組織構造をどうするべきか
これらは“経営判断の塊”であり AIには難しい領域です。
そして、フランチャイズ本部構築のコンサルタントが、 最も大きく価値を発揮する領域です。
(2) トラブル回避・リスクマネジメント
「売上予測」「テリトリー」「契約解除」などは トラブルの温床になりやすい箇所です。
しかし、これらは
- 加盟希望者の理解度
- 本部の説明内容、方法
- 双方の契約に対する姿勢
- 本部と加盟者の信頼関係
によって変わる“人間の領域”です。
AIは「項目漏れ」「矛盾」の検知が得意ですが、加盟希望者の心理や不安をケアすることはできません。
(3) 経営者の意思決定を支える“参謀”の役割
AIは情報整理はできても、「どちらの方向に進むべきか?」 という経営判断はできません。
- 直営を増やすべきか
- FC化すべきか
- 海外展開すべきか
- どのエリアに出店すべきか
- どのパートナーを選ぶべきか
最後は、経営者(人間)の経験と判断力が必要です。
これからのフランチャイズコンサルタントは、 経営をともに考える“参謀”へと進化していきます。
(4) 加盟者の「覚悟」形成はAIには絶対にできない
フランチャイズ加盟は“経営”です。
加盟希望者には、
- 投資リスク
- 労務リスク
- 契約リスク
- 事業継続リスク
など、現実的な説明が欠かせません。
これは「人間の表情」「温度感」「理解度」を見ながら 丁寧に説明する必要があり、AIにはできない領域です。
AI時代に求められるフランチャイズコンサルタントの姿
AIが作業を代替する時代、 コンサルタントが担う価値は「高度化」します。
今後のフランチャイズコンサルタントに求められるのは、次の4つだと考えています。
(1) “AI × FC本部構築”の統合プロデューサー
AIツールを駆使しながら、
- 本部の業務フローの整理
- AI導入ポイントの策定
- 省人化できる領域
- 人間が判断すべき領域
を全体最適化できる専門家である必要があります。
これは従来の“本部構築コンサル”に加えて “システム設計者”の要素を加えた形へと進化した姿です。
(2) リスク・契約・コンプライアンスの全体設計
AIは契約条文の矛盾を指摘できますが、
- どこまで本部が義務を負うか
- 加盟者と本部のバランスをどう取るか
- テリトリーの有無をどう判断するか
- 更新条件をどう設計するか
といった“経営判断”はできません。
ここにこそ、フランチャイズコンサルタント(専門家)としての価値があります。
(3) 加盟者と本部の関係性をデザインするコーチ
AIは人間の感情を理解できません。
加盟店が成果を出すためには、
- オーナーや店長、スタッフのマインドセット
- スタッフ教育、モチベーション管理
- 組織運営
など“人”に関わる領域が最も重要です。
AIは“事実”を扱い、コンサルタントは“感情・動機”を扱う。
この組み合わせが最強の本部を作ります。
(4) 多事業展開・海外展開の戦略顧問
日本のフランチャイズ市場は、法人加盟の比率が高い市場です。
法人が求める支援は、
- 中長期戦略
- ポートフォリオ経営
- 資本政策
- 海外展開
- エリアフランチャイズ戦略
など、AIが最も苦手な“未来戦略”の領域です。
フランチャイズコンサルタントの価値は、 むしろAI時代に上がっていきます。
AI時代にフランチャイズ本部が“最初にやるべきこと”
最後に、 これから本部立ち上げを考えている企業に伝えたいことがあります。
それは、 “AIをどう活用するか?”よりも“本部の本質をどう作るか?”が先ということです。
AIは本部の道具であり、本部そのものではありません。
最初に考えるべきは、
- 本部の理念・ビジョン
- 直営店の成功モデル
- 事業の再現性
- 本部が担うべき価値
- 加盟者との関係性
- 契約・開示の透明性
- 加盟者が成功する仕組み
これを専門家と共に設計したうえで、 AIを”組み込むべき場所”に組み込んでいく。
この順番を誤ると、 AIの効果は出ません。
おわりに
AI時代のフランチャイズ本部は、“省力化された本部”ではなく “判断と設計に集中する本部”へと進化します。
そして、 フランチャイズコンサルタントは“作業をする人”ではなく、 仕組みをつくり、未来を設計し、人を導く存在へと価値が高まっていきます。
本部を立ち上げたい企業にとって、 AIは心強いツールです。しかし、それ以上に重要なのは、 人間だからこそできる判断・設計・関係構築の部分です。
AIと専門家が役割分担しながら、 加盟者が成功しやすい、 本部が適切に統治される、 持続的な成長が可能なチェーンを構築していく。
それが“AI時代のフランチャイズ本部づくり”の本質です。







