フランチャイズとは何か?初心者にもわかりやすく意味・しくみを解説

フランチャイズとは何か

フランチャイズとは?と問われて、答えることはできますか?
フランチャイズ本部を目指す、あるいは、すでに本部になっているのであれば、最低限、これには答えられないといけません。
これからフランチャイズビジネスに関わる初心者に向けて、法律などで定義されていることや意味、ビジネスの仕組みを、なるべわかりやすく解説します。

フランチャイズとは?

フランチャイズの定義

法的な定義としては、中小小売商業振興法において「特定連鎖化事業」として定義が記載されており、これがフランチャイズに該当します。
同法の4条5項では、以下の事業を「連鎖化事業」と定義しており、

主として中小小売商業者に対し、定型的な約款による契約に基づき継続的に、商品を販売し、又は販売をあつせんし、かつ、経営に関する指導を行う事業をいう

同法の11条1項で、こうした連鎖化事業のうち、以下の事業を「特定連鎖化事業」と定義しています。この特定連鎖化事業にフランチャイズビジネスが含まれていることになります。

当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの

しかし、特定連鎖化事業にはボランタリーチェーンも含まれます。一方、同法は「小売業」「飲食業」のフランチャイズが対象になっていますが、「サービス業」のフランチャイズは対象とはなっていません。

また、公正取引委員会の定義では以下のようになっており、こちらは「小売業」「飲食業」「サービス業」すべてのフランチャイズが対象となっています(フランチャイズガイドライン)。

「本部が加盟者に対して、特定の商標、商号等を使用する権利を与えるとともに、加盟者の物品販売、サービス提供その他の事業・経営について、統一的な方法で統制、指導、援助を行い、これらの対価として加盟者が本部に金銭を支払う事業形態」であり、おおむね次のような事項を含む統一的契約である。
[1]加盟者が本部の商標、商号等を使用し営業することの許諾に関するもの
[2]営業に対する第三者の統一的イメージを確保し、加盟者の営業を維持するための加盟者の統制、指導等に関するもの
[3]上記に関連した対価の支払に関するもの
[4]フランチャイズ契約の終了に関するもの

さらに、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会では次のように定義しています。

フランチャイズとは、事業者(フランチャイザー)が他の事業者(フランチャイジー)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう。

フランチャイズのポイントは3つ

まとめると、フランチャイズビジネスのポイントは、次の3つになります。

  1. 本部と加盟者は各々独立した事業体であり契約に基づいて”共同事業”を行なうもの
  2. 本部から加盟者にフランチャイズパッケージが提供される
  3. フランチャイズパッケージの見返りとして、加盟者は本部に一定の対価を支払う

フランチャイズビジネス

本部と加盟者は法律的にも財務的にも、それぞれが独立した事業体であり、フランチャイズ契約によって結ばれたビジネスパートナーの関係です。
お互いの協力の元で「共同事業」を行なうものであって、同一経営体の元で「共同経営」を行うものではありません。当然ながら、経営の結果(成功/失敗)は、それぞれの責任になります。
本部から加盟者に対してはフランチャイズパッケージが提供されます。フランチャイズパッケージとは、

  1. 商標の継続的使用の許可
  2. 経営ノウハウの提供
  3. 継続的な経営・運営指導
  4. 差別化された製品の供給

などが含まれます。フランチャイズ契約では、これらのものが、一連のビジネス展開に必要なものとして、包括的かつ体系的に、標準化されたパッケージとして提供されます。

フランチャイズパッケージ
そして、加盟者はこのパッケージの見返りとして、本部に対価を支払うことになります。対価とは、「加盟金」「ロイヤルティ」などです。また、必要な事業資金を自ら投入することになります。

「加盟金」とは、フランチャイズ契約締結時に加盟者から本部に支払われる金銭のことで、フランチャイズ契約によっては「権利金」「入会金」「分担金」などと呼ぶこともあります。加盟金の性質は、一般的には、

  1.  営業許諾料(営業権の付与)
  2.  商標・サービスマークの使用料(ブランド使用料)
  3.  開業準備費用(立地診断費用・開業前研修費用等)
  4.  ノウハウ開示の対価(ノウハウ使用料)

として支払われるものとされています。
フランチャイズ契約によっては、加盟金は、ⅰ~ⅳの一部のみの対価する場合があり、そのような場合には「開業前研修費」「マーケティング費用」などという名目で別途徴収とすることがあります。

そして「ロイヤルティ」は、フランチャイズ契約締結後に、加盟者から本部に定期的に支払われる金銭のことであり、継続的に提供されるフランチャイズパッケージに対する対価です。継続的に提供されるフランチャイズパッケージとは、「商標の継続的使用の許可」「継続的な経営・運営指導(SV)」などが含まれますが、それ以外にも、ITシステムの使用料や本部のよる宣伝広告費などが含まれる場合もあります。逆に、商標の継続的使用料だけを「のれん代」「看板料」と称して徴収する場合もあります。

さらに、多くのフランチャイズ加盟店が統一した活動を行うようにするためには、フランチャイズ展開における理念やビジョンをしっかりと構築し、表明しておくことが必要です。
フランチャイズ研究会による調査では、成功している加盟店ほど、フランチャイズ本部の経営理念やビジョンに賛同していたという結果が出ています。

フランチャイズかどうかは実体で判断される

社会構造や政治・経済、市場環境の変化に伴い、昨今では、様々なタイプのビジネスが展開されています。例えば、

  • 商材や商売のやり方は揃えるが、店舗名や商標は統一しない
  • 看板は統一するが経営のやり方には自由度がある
  • 加盟金を徴収し店舗オープン支援まで行うが、その後の指導はない(ロイヤルティなし)

などがあります。 また、「フランチャイズ」という名称を使わずにチェーン展開をしている例などもあります。
しかし、商標の使用や経営に対する指示・指導、それに対する対価の受領などについて、一定の要件を満たす場合、フランチャイズと同様の法的制約を受けることがありますので注意が必要です。

フランチャイズビジネスに関わる法律

事業を展開する上で法律は無視できません。当然ながら、フランチャイズビジネスにおいても同じことです。では、フランチャイズビジネスに関係する法律には何があるでしょうか。

フランチャイズには法律がない?

実は、日本にはフランチャイズビジネスの規制を直接の目的とした法律は存在していません。

フランチャイズ本部から加盟者に対する情報開示や運用のあり方について、「中小小売商業振興法」と「独占禁止法」に一部定めがあるだけです。
前者は、日本の小売業の近代化や振興を図ることを目的としており、後者は、不当な取引制限や不公正な取引方法を禁止して自由競争を促進することを目的としています。
これらの法律はフランチャイズビジネスの一部だけしか見ていません。そのため、公正取引委員会の運用(フランチャイズ・ガイドライン等)と、裁判の判例によって補われているのが実体です。

前述の法律以外には、商標法、不正競争防止法などが重要な法律となります。フランチャイズチェーンの看板(商標)のもつ集客力や信用性などが、チェーンの重要な価値だからです。
その他にも、民法、商法、特定商取引法、特許法、製造物責任法などがフランチャイズビジネスに関係します。

フランチャイズ業界の自主基準

法律以外では、業界の自主基準が定められています。
フランチャイズビジネスの健全な発展のため、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会から、「一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会倫理綱領」「加盟者希望者への情報開示と説明等に関する自主基準」「フランチャイズ契約の要点と概説」などが発表されています。

以上のように、フランチャイズビジネスを直接的に規制する法律はありませんが、様々な法律や自主基準によってフランチャイズビジネスが成り立っています。
①これまでフランチャイズ本部が構築してきたビジネスモデルやブランド価値を最大限に生かし、②加盟者にとって、加盟することと加盟し続けることのメリットが具体的に考えられており、②かつフランチャイズ本部を守る手段が講じられている、健全なフランチャイズビジネスを展開するためには、法律や自主基準を正しく理解しておくことが必要となります。
そのため、フランチャイズ本部の構築と発展には、ビジネス法務に詳しいフランチャイズコンサルタントや、フランチャイズビジネスに精通した弁護士など、専門家の協力が必要です。

フランチャイズのビジネスモデル

フランチャイズビジネスは、これまで長年に渡って進化し続け、その市場規模も成長を続けています。なぜ、そのようなことが可能だったのか?
それは、ちょっと特異な形をしたフランチャイズ独特のビジネスモデルに秘密があります。

ビジネスモデルとは?

ビジネスモデルとは何か? 一言でいえば「儲けのしくみ」のことです。

  • 誰に(顧客ターゲット)
  • 何を(顧客価値)
  • どのようにして提供するか(開発・生産・販売・物流システム)

この一連の流れで儲けを作るしくみのことをビジネスモデルと呼びます。
このビジネスモデルを表現する重要なツールとして『ビジネスモデルキャンバス』というものがあります。
これは、『ビジネスモデルジェネレーション』という書籍に登場します。この書籍は世界22カ国で翻訳され、すでに200万部を突破するなど、ビジネス書としては空前のベスセラーとして大きな注目を集めています。
ビジネスモデルキャンバスでは、ビジネスモデルの特徴を表現するため、その全体像を9つのブロックに分けて記述していきます。キャンバス全体を見渡すと、各ブロックが相互に関係し合いビジネスが成り立っていることがわかります。一番下にある「コスト構造」と「収益の流れ」はビジネスの土台となるものです。キャンバスの右半分は、顧客が求めるニーズに合致する顧客価値を、顧客との関係を構築・維持しながら届けることで収益が入ってくることを表しています。左半分は、リソースや主要活動、パートナーとの連携などによってコストが発生する様子が表されます。

BMC

http://www.businessmodelgeneration.com

【顧客セグメント】企業が関わる・関わろうとする顧客は誰か?どのセグメントか?
【価値提案】特定の顧客セグメントに向けて、価値を生み出す製品・サービスは何か?
【チャネル】顧客セグメントと、どのようにコミュニケーションし価値を届けるのか?
【顧客との関係】特定の顧客セグメントに対して、どのような種類の関係を結ぶのか?
【収益の流れ】顧客セグメントから生み出す現金は、どのように流れるのか?
【リソース】顧客価値を提供するために必要な資産は何か?
【主要活動】顧客価値を提供するために必ず行わなければならない重要な活動は何か?
【パートナー】主要活動を行うため・足りないリソースを補うための主要なパートナーは誰か?
【コスト構造】主要活動を行うため・リソースを維持するために発生するコストは何か?

フランチャイズのビジネスモデルはちょっと特殊

では、フランチャイズをビジネスモデルという観点から見るとどうなるでしょうか?

前述したとおり、フランチャイズビジネスでは、本部と加盟者は法律的にも財務的にも、それぞれが独立した事業体であり、フランチャイズ契約によって結ばれたビジネスパートナーの関係となります。
本部から加盟者に対してはフランチャイズパッケージが提供されます。フランチャイズパッケージとは、「商標の継続的使用の許可」「経営ノウハウの提供」「継続的な経営・運営指導」などが含まれ、一連のビジネス展開に必要なものとして、包括的かつ体系的に、標準化されたパッケージとして提供されます。
そして、加盟者はこのパッケージの見返りとして、本部に対価を支払います。対価とは、「加盟金」「ロイヤルティ」などであり、同時に必要な事業資金を自ら投入することになります。
フランチャイズとは、本部と加盟者が、契約に基づいて異なるビジネスモデルを運営し発展していくビジネスであり、下図のようにビジネスモデルキャンバスを左右につなげたようなモデルとなります。この特異な形が、フランチャイズビジネスの特徴であり、急速に発展するための秘密がここにあるのです。

フランチャイズビジネスのメリット・デメリット

FC本部のメリットとして、他人資本を活用することにより、コストを抑えつつ短期間での事業展開が可能になることが挙げられるでしょう。このことで、ブランドイメージの早急な拡大が図れるとともに、スケールメリットが得られるようになります。

  • 中小企業(小資本)であっても、コストを抑えた大きな事業展開が可能となる
  • 地元加盟者による地域密着展開が可能で、本部が進出しきれていないエリアでの事業展開が進む
  • 短期間で大きなマーケットシェア獲得ができる
  • 統一されたイメージ(看板・商品)の拡大によるブランド価値向上が狙える(販促効果が加速する)
  • 店舗数拡大によるスケールメリットを享受できる
  • 加盟金等加盟時のイニシャルフィーによる売上アップが期待できる
  • ロイヤルティ等のランニングフィーによる安定収入源を確保できる

一方、FC本部のデメリットとしては、本部の構築・維持にコストがかかる点や、独自ノウハウの流出、加盟者の不正などによるブランドイメージダウンのリスクなどが挙げられます。

  • FC本部の立ち上げに人員・コストがかかる
  • 継続的なノウハウ開発や加盟店指導のための人員・コストがかかる
  • 質の悪い加盟者によりFCチェーン全体のイメージダウンのリスクがある
  • 加盟者との良好な関係を維持するための人員・コストがかかる
  • 本部の独自ノウハウ流出のリスクがある
  • 加盟者とのトラブル、訴訟リスクがある
  • FC展開上のリスク対策にコストや労力がかかる

これらのデメリットを極力なくすため、特にFC本部を立ち上げる段階では、専門家によるサポートは必須といえるでしょう。

『フランチャイズ』と『のれん分け』はどう違うのか?

以上、フランチャイズについて解説しました。一方、日本には昔から「のれん分け」という独立制度があります。長年、その会社で働いてくれた従業員に対して「のれん(暖簾)=屋号」を使って独立することを認めるものです。「フランチャイズ」と「のれん分け」との違いについては、↓のコラムで解説しました。併せてご覧ください。

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